Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

軍事史への招待

ウラジオストク港の意義

自ら仕掛け、泥沼化したウクライナ戦争で、ロシアは相当苦しい状況に置かれているようだ。極東でも、北朝鮮からの支援を求めるだけでなく、中国にも譲歩して協力を求めているとの記事があった。 メディアが騒ぎ立てる「中国が165年ぶりにウラジオストク奪還…

自衛官のリスキリング

自衛隊のドクトリンが「北海道の原野でソ連軍の電撃戦を阻止する」から「南西諸島への中国軍の侵攻を阻む」に代わっているのだが、頭は変わっても体が付いてこない状態だった。こういうトランスフォーメーションには時間がかかるし、予算の方も柔軟性に欠け…

アウディイウカの激戦

すっかりガザ地区の紛争(イスラエル軍の特別軍事作戦!)に目を奪われて、ウクライナ戦線の情報が少なくなっている。攻勢に出ているはずのウクライナ軍だが、主目標のトクマク正面の攻防戦の情報は、まるきりない。ATACMSなど長距離兵器は確かに活躍してい…

ガザの病院爆発!事態は揺れ動く

紛争を続けていれば、間違いなく悲劇は起きる。今回は、ある意味最悪のタイミングでそれ(*1)が起きた。ガザにある病院で大規模な爆発が起きて、500人以上の犠牲者が出た。 ガザの病院に空爆 500人以上死亡 - Yahoo!ニュース ハマスはイスラエル軍の(意図…

待ち受けるハマスの地下要塞

ガザ地区を完全に包囲したネタニヤフ政権、ハマスを壊滅させるまで闘うとして、一昨日挙国一致内閣の初会合を開いた。全国民の名にかけて、ハマスを根絶やしにする覚悟である。主力である地上軍も配置に着き、いつでも侵攻を開始できる。すでに威力偵察目的…

粘着榴弾の効果について

廃棄が決まっている陸上自衛隊の74式戦車、開発当時は油圧懸架装置(*1)など斬新な機構を盛り込んだ意欲作だった。それらの機能も、今回ウクライナに供与・・・ではなくウクライナの地で廃棄でもなければ、実戦で使用されずに終わってしまう。実は、油圧懸架装…

ロシア期待の「第二戦線」

WWⅡが欧州を覆い尽くしていた1943年、英米からの物資援助で息を吹き返していたソ連軍だが、まだドイツ軍を打倒できるところまでの戦力はなかった。スターリンは英米に対し、早期の第二戦線開戦を訴えた。ナチスドイツの圧力を独力で支えるのは限界だという主…

勇気は必要ない・・・

ウクライナの反転攻勢に関する映像が、連日BSニュースで流れてくる。欧州各国のメディアが前線に近いところに出ているようだし、ウクライナ軍自体が映像を撮ってメディアに流したり、直接SNSで公開している。さすがに撃ち倒されるシーン(例:ロバート・キャ…

「忘れられれば撃破されよう」

これは、北アフリカ戦線で闘うロンメル将軍がメディアに語った言葉と伝えられる。本来ソ連戦線に回したい資源をアフリカに回してもらうには、ドイツ市民に注目されていないといけないという意味だ。そのため、ロンメルはメディアを巧みに利用してヒトラーだ…

攻撃できなければ防御できない?

サイバー空間には「Law & Order」は、ほとんど存在しない。ウクライナ紛争のようにはっきりしたものでなくても、いろいろな国の政府機関や重要インフラ企業は、常時リスクに晒されている。7月にも名古屋港が攻撃され、一時的とはいえ港湾機能が停止している…

原子力潜水艦のコスパ

北朝鮮は今年、建国75周年を迎えている。市民は飢餓状態にあるとも伝えられる中で、軍事パレードや「衛星」打ち上げなど勇ましいことが目立つ。先週は核兵器搭載の攻撃型潜水艦を進水させている。 北朝鮮、「戦術核攻撃潜水艦」を進水 式典で正恩氏が演説 - …

高価な兵器は駆逐される

改めて、ロシア・ウクライナ戦争は「ドローンの戦争」と歴史家が銘打つだろうと感じた。連日のようにモスクワの中心地、クレムリン周辺を襲うウクライナ軍(もしくは自由ロシア軍)のドローン攻撃に加え、ロシアの黒海沿岸の港湾ノボロシースクでのロシア揚…

乾坤一擲!ロシア軍の電撃戦

寝苦しい夜だった。僕は分厚い軍事スリラーを100ページほど読み、眠気が来たので電気を消した。そして、夢を見た。 *** 以下 夢の中で・・・ GRU出身のロシア軍参謀A将軍は、膠着した戦線を劇的に変えてしまう作戦を立案した。ウクライナ軍が東部、南部で攻…

ディエップ上陸作戦

先週、24日はロシアのウクライナ侵攻からちょうど1年半。また、旧ソ連からウクライナが独立した記念日でもあった。ロシアとウクライナの関係については、何度か紹介してきたように、血みどろの歴史がある。20世紀になってからも、 ・1932年、スターリンがウ…

単なる大統領の別荘・・・ではない

先週末、日米韓三ヵ国首脳会議が、米国メリーランド州キャトクティン山岳地にあるキャンプ・デービッドで行われた。極超音速ミサイル迎撃技術の共同開発や、台湾海峡の安定・北朝鮮の非核化・ウクライナ支援などが議論され、一定の成果を挙げたと伝えられる…

穀倉地帯ウクライナの地政学史

ウクライナの国旗は、上半分の青が雲一つない晴天、下半分がたわわに実った小麦畑を表している。世界でも有数な穀倉地帯であるウクライナは、欧州はもちろん中東からアフリカ諸国の胃袋を支えてきた。それが昨年来のロシアからの侵攻によって、特に穀物の輸…

既定路線だったクラスター弾供与

「非人道的な兵器」と非難されるものは、いろいろある。まあ、人道的な兵器を探すのが難しいから、そんなものは一杯あるはず。第一次世界大戦のころは、米軍が使用したショットガンをドイツは非人道的と非難した一方、ドイツ軍のサブマシンガンを米国は同様…

モスクワまであと200km

週末、ウクライナ~ロシア情勢が大きく動いた。ウクライナ側の反転攻勢は、やはり防御に強いロシア軍(これはウクライナも同様)の抵抗に遭って、西側の評論家たちが思っていたほど進んでいない。しかし、ロシア(≒プーチン)の真の敵はロシア内にある。それ…

AI時代の交戦規則は?

ウクライナ紛争は、後年「ドローンの戦争」と呼ばれるかもしれない。主力戦車が揃ってきて、ウクライナ軍の反転攻勢が近いと言われるが、それに先立ってウクライナ軍のロシア軍後方での工作が激化している。 先月、クリミアの石油施設を攻撃し、ドネツクでも…

祝100歳、インテリジェンスの妖怪

先月、ヘンリー・キッシンジャー博士が100歳の誕生日を迎えた。表舞台にこそ立たないが、報じられる一言一言が深い意味を持っていると感じる。<タイム誌>は、 「現在の、真に多極化した世界において、キッシンジャー氏の現実的なアプローチがこれまで以上…

ペリリュー島の地政学的価値

久しぶりにこの島の名前を聞いた。パラオ諸島の中心地ペリリュー島。第一次世界大戦以前は、ドイツ(第二帝国)の委任統治領。大戦後大日本帝国の領土となり、大規模艦隊根拠地としてのトラック諸島と同様、帝国海軍の太平洋進出の要となった島だ。そこに、8…

実戦でしか得られないもの

先週、ロシア軍がキーウ近郊に「飽和攻撃」と思われるミサイル攻撃を加えた。これは一斉に大量のミサイルを集中させて、防御側の処理能力(探知・追跡・迎撃軌道計算・迎撃)を越えさせるというもの。報道によると、この時使用されたのは、 ・極超音速ミサイ…

2つの空間でのテクノロジー戦

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ紛争は西側から仕掛けられたものだと言い続けている。表立っているのは確かにウクライナ兵(ネオナチ?)だが、実際は西側、特に米国と交戦している祖国防衛戦だとして、市民を鼓舞している。 当然西側各国の主張は違う…

クリミア半島奪回作戦

クライナ紛争は、この1~2ヵ月の間に節目を迎えようとしている。各レベルでのシミュレーションゲーマーとしての論点は、 ◆戦略級 ロシアの内部分裂しか、早期の停戦・終戦はあり得ない。中国が仲介するのか、プーチン政権が倒れるのか、核戦争にエスカレー…

第二次世界大戦の亡霊

ウクライナ紛争は膠着状態に入っている。ロシア軍がかなりの兵力を投入したバフムト周辺の戦いも、寡兵のウクライナ側が良く守り、ロシア軍の士気が上がらないこともあって目に見える戦果はないようだ。 両軍ともあらゆるものを前線に送り出し、ウクライナ軍…

最強のインテリジェンスサービス

昨年末ころ、総理官邸に米国の有力な軍事・インテリジェンス関係者が大勢出入りしているとの噂はあった。ウクライナ紛争や米中対立で、国内にも「戦争が起きるかも」との危惧があり、米国としても日本を経済だけでなく軍事でもパートナー化したい思惑が出て…

ロシア軍の新鋭AFV(後編)

それでは、2種類のロシア軍新鋭AFVのスペックを見てみよう。 ◇T-14 乗員3名、重量55トン、最高速度90km/h、主砲125mm滑腔砲、重機×1、機銃×1 2015年の戦勝パレードで初お目見えしたAFVで、ソ連時代以降初めて50トンを超えた戦車である。最大の特徴は無人…

ロシア軍の新鋭AFV(前編)

ウクライナへの西側MBTの供与が決まり、新鋭戦闘爆撃機以外の通常兵器が続々かの地にやってくる。これに対してロシア軍は第一次世界大戦当時の重機関銃や、骨董品のT-62戦車などを引っ張り出して応戦するという。ではロシア軍に新鋭AFVはないのかと言えば、…

エイブラムス対T-72

先月、ドイツのショルツ政権が重い腰を上げ、ついに<レオパルト2>のウクライナへの供与を発表した。再三表明していたように「英米が先に決めてくれれば、三番手として供与するのはやぶさかではない」というわけ。英国はいち早く<チャレンジャー2>の供…

ウクライナが求める西側MBT

「ドイツが<レオパルト2>の供与を決めるかどうか?」国際ニュースは連日この話題を報じている。欧州(西側)諸国の標準的主力戦車(MBT)のことなのだが、すでに「戦車の世紀」は終わったと思っていた僕としては、やや意外な状況。軍事の関係者か、はたま…