Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

自衛官のリスキリング

 自衛隊のドクトリンが「北海道の原野でソ連軍の電撃戦を阻止する」から「南西諸島への中国軍の侵攻を阻む」に代わっているのだが、頭は変わっても体が付いてこない状態だった。こういうトランスフォーメーションには時間がかかるし、予算の方も柔軟性に欠けていたからだ。何より、自衛隊そのものが「闘わなくてもいい軍隊」だったのだから、仕方ないことではある。

 

 しかしようやく防衛3文書改訂・防衛費増となって、本気で体制構築が始まっている。象徴的だったのが、自衛隊に「海上輸送群」を創設したこと。普通に考えれば海上輸送は海上自衛隊の仕事だが、司令部は海上自衛隊呉基地に置くとはいえ、要員の多くは陸上自衛隊から選ばれ、陸海自衛隊の合同軍の位置付けだ。

 

防衛費、過去最大の7兆7千億円 統合司令部、輸送隊新設:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 

 先の大戦での陸軍・海軍の仲の悪さの例として、南洋島嶼戦の主に兵站輸送のため陸軍が、(ゆ)という潜水艦や輸送用の空母を建造した話がある。少ない資源を奪い合った愚策と歴史家は言う。

 

    

 

 予算が付きそうだから、陸上自衛隊も輸送船をもちたいという話かと思ったのだが昔の話とは事情が異なる。現に米軍は、陸海空に海兵隊まで含めて個別の海上輸送手段を持っている。なぜ陸上自衛隊が共同管轄しているかというと、要員の管理の面が大きいようだ。自衛隊全般として隊員不足が顕著、特殊技能を必要とする海自・空自からは要員の抽出が出来なかったと思われる。

 

 そこで陸自の隊員をリスキリングして「船乗り」技術を身に付けさせようというわけ。現代戦では小銃(&銃剣)を持って闘う兵士の重要性が減っていて、その戦闘スキルだけでは隊内での存在感も薄いのだろう。

 

 サイバーセキュリティ業界では「他に専門職を持っていて、かつセキュリティ知識もある人材」をプラスセキュリティ人材と呼んで育成法を検討しています。今回のリスキリングをあてはめると「他に(船舶・航空・機械化等の)専門職を持っていて、かつ小銃を持って闘える人材」、プラスコンバット人材への道ということになるのでしょう。