Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

モスクワまであと200km

 週末、ウクライナ~ロシア情勢が大きく動いた。ウクライナ側の反転攻勢は、やはり防御に強いロシア軍(これはウクライナも同様)の抵抗に遭って、西側の評論家たちが思っていたほど進んでいない。しかし、ロシア(≒プーチン)の真の敵はロシア内にある。それは突然やってきた。

 

 以前から正規軍との確執を抱えていた民間軍事組織<ワグネル>の指揮官プリゴジンが、プーチン政権に叛旗を翻したのだ。バフムト近郊で戦果を挙げ、再編のために後方に下がっていた<ワグネル>の2万人が、突然ロストフの軍司令部を占拠した。きっかけは正規軍から攻撃を受けたというもの。さらにロストフ州から北へボロネジ州に進軍し、モスクワを窺う姿勢を見せた。正規軍も反撃し、ボロネジでは反乱軍の車列に正規軍の攻撃ヘリが襲い掛かったとも報じられている。

 

    

 

 もしロシアが内戦状態になれば、世界の軍事情勢は一変する。西側指導者たちにも緊張が走った。情報も限定されているし、かの国では何が起きるか誰も予想できない。ただ23日に始まったこの変事、ほぼ48時間で収束したようだ。モスクワまであと200kmと迫った部隊は、ロストフ方面に引き返し緊張は緩和された。日本時間25日朝の報道によると、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介し、

 

プリゴジンベラルーシに亡命

・<ワグネル>部隊は正規軍に編入

・いずれも(表向き)叛乱の罪には問われない

 

 ということで手打ちが成立したらしい。プリゴジンが要求していたショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長ら正規軍TOPの処分などは、どうなるのか公表されていない。亡命したからといってプリゴジンの身柄が安泰というわけでもない。旧KGBの長い腕は、ロンドンにでも届く(*1)からだ。

 

 <ワグネル>部隊員の相当数は囚人をかき集めたものだし、正規軍に編入されればまともに扱われるはずもない。他にも30以上あるロシアの民間軍事組織に逃げ込めれば上々だろう。さて、ロシアの内部からの崩壊の最初の一歩になるか?注目していないといけませんね。

 

*1:元KGBスパイで、英国に亡命しロシアの工作を告発したアレクサンドル・リトビネンコは、2006年にポロニウムで毒殺されている。