「非人道的な兵器」と非難されるものは、いろいろある。まあ、人道的な兵器を探すのが難しいから、そんなものは一杯あるはず。第一次世界大戦のころは、米軍が使用したショットガンをドイツは非人道的と非難した一方、ドイツ軍のサブマシンガンを米国は同様に非難した。これらは、100年経った今でも各国軍隊で普通に使われている。
しかし、中でも特に非人道的なものは、国際条約で、開発・製造・保有・使用などが禁じられている。代表的なものとしては、核兵器、生物兵器、化学兵器(いわゆるABC兵器)があるが、戦後復興の障害となる対人地雷や、黄燐弾や劣化ウラン弾、気化爆弾のように通常より破壊力の強いものを非難する人もいる。
「特に」が付く非人道的兵器のひとつが、クラスター弾(or爆弾)。大型の弾体の中に複数の子爆弾を搭載したもので、広範囲に爆発物をバラ撒けるので、敵を面で制圧することができる。先々週、ウクライナにこれを供与するとバイデン大統領が発表し、その次の週には第一陣が現地に届いた。
ウクライナ、米軍供与のクラスター爆弾受け取る バイデンの発表からわずか1週間弱|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
ロシアの反発はもちろんだが、NATO諸国からも反対表明が出る中、米国が供与を急いだ背景は、
・絶望的な弾薬不足、弾薬なくしてウクライナの反転攻勢は成功しない
・もちろん他の紛争に備えての備蓄は必要で、米国が供与できる通常弾薬も少ない
・塹壕など防御施設に立て籠もるロシア兵は(伝統的に)頑強
と思われる。ゼレンスキー大統領が「もっと兵器を!」と叫ぶのはいつものことだが、これまで長距離ロケット砲や対空ミサイルシステム、主力戦車などの供与にかかった日数と比べると、発表から供与までの期間は異常に短い。おそらく1ヵ月以上前に供与を決めた、規定路線だったのだろう。