Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

政策担当者への伝言

「Emotet」再々流行のなぜ

昨年はランサムウェアが暴れ回り、米国最大の石油パイプラインを止めたり、ブラジル食肉大手の業務を妨害した。日本でも徳島の半田病院の電子カルテシステムが止められ、長期間診療が制限された。今年になってからも、トヨタ自動車の大手取引先の受発注シス…

本当なら嬉しい話だが・・・

先週産経新聞の「独自記事」として、日本政府にセキュリティ・クリアランス制度の導入の動きがあるとの報道があった。確かに他のソースには同様の記事はないので、スクープであることは間違いがない。 <独自>機密情報取り扱い資格を制度化へ 経済安保、改…

商工会議所の役割(3/終)

続いて外資系保険会社の人が登壇、この人は僕より25cmは背が高く、声も大きい。最初から上衣を脱いでの熱演である。冒頭、 ・被害を受けて米国の企業は体制を整え、攻撃を早めに検知できる ・日本を含めたアジアの国の企業は、5~6倍検知や発覚が遅く危険…

商工会議所の役割(2)

会場は商工会議所ビルの会議室、3部屋をぶち抜き70ほどのテーブルが並んでいた。参加予定者は50名ほど、1テーブルに1人の利用で距離を取れるようになっている。商工会の人によれば、関心が高いテーマでいつもよりずっと参加者が多いとのこと。参考までに…

商工会議所の役割(1)

「サイバー攻撃、怖いですよ~」「サイバーセキュリティは経営者の責任ですよ~」と方々でお話ししているのだが、そういう場の大半は今ではビデオ会議。リアル会議が復活しつつあるのだが、それでも東京23区内での機会がほとんどだ。僕の活動など大したこと…

「デジ臨」の規制改革案

昨日まで「インフラメンテナンス業務の産業化」の議論をご紹介した。老朽化が進む日本の社会インフラをどう支えるか、やはり決め手はデジタル化(活用)だと思う。岸田政権の重要機関のひとつ「デジタル臨時行政調査会:デジ臨」が、先ごろアナログ規制撤廃…

インフラメンテナンス産業論(3/終)

菅内閣で成長戦略会議のメンバーを務めた小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長は、中小企業を合併等で大きくしないと生産性が上がらないといい、大きくならなければ消えてもらうと発言して炎上している。しかし僕は、その主張は正しいと思っている…

インフラメンテナンス産業論(2)

国交省では、これまで述べてきた日本のインフラの老朽化対策を考え続けていて、指針となる文書をまとめようとしている。今回集まった委員たちは、それを監修する立場にある。霞ヶ関のこの種の会合は、ともすれば「予算獲得のための官僚の作文を追認する御用…

インフラメンテナンス産業論(1)

2週間ほど前、三重県鈴鹿市役所などを訪問してインフラメンテナンスの現場を見せてもらった体験を紹介した。霞ヶ関のビル内での議論はずいぶん聞いていたのだが、やっぱり現場を見ると実態が分かってくる。それなりの規模があり財政的にも比較的余裕のある…

IPEFはTPPがいやだから・・・だけ?

米国バイデン大統領は、初めてのアジア訪問、日本訪問、「QUAD」会合などをこなして帰国した。その中で「インド太平洋経済枠組み:IPEF」の立ち上げも行った。 米主導IPEF、13カ国で発足 経済安保で「脱中国」―日本も参加:時事ドットコム (jiji.com) …

インフラメンテナンスの現場(7/終)

翌朝、鈴鹿市内のビジネスホテルで、ちょっと遅めに目覚めた。あまりにもInput情報が多すぎて脳が刺激を受けたからだろう、寝付けなかったこともある。朝食は6時半からで、出発は8時前。慌てて着替えて朝食会場に降りて行った。 朝食はバイキング方式、一…

インフラメンテナンスの現場(6)

次に見せてもらったのは<鈴鹿フラワーパーク>の南側に広がる白鳥湖(加佐登調整池)の傍らにある橋。用水路を渡るだけの短い(5m位)の橋で、用水路が出来上がって後に掛けられている。用水路のコンクリート壁の上面に乗っける工法で作られたのだが、橋…

インフラメンテナンスの現場(5)

今回のツアー、市役所庁舎内だけの議論だけではなく、実際に現場を見せてもらうこともできた。資料で見せられた「包括委託」工事の結果や、橋梁の工事の現場、公園の整備状況などもマイクロバスで巡ってもらえた。<鈴鹿フラワーパーク>というのは、市の中…

インフラメンテナンスの現場(4)

自治体としての予算や要員については理解できた。次は、自治体からの発注を受ける事業者(簡単にいえば土建屋さん)との意見交換会である。昨日紹介したように鈴鹿市の「包括民間委託」では、複数社のジョイント・ベンチャー(JV)が受注して施工した例があ…

インフラメンテナンスの現場(3)

苦しい自治体のインフラ(特に議論したのは道路)メンテナンス、費用については国が補助したり、発注形態を変えるなど現場の工夫で乗り切ろうとしている。残念ながらDXによる抜本合理化には手が付いていないようだが・・・。 次の論点は、技術とそれを支える人…

インフラメンテナンスの現場(2)

まず鈴鹿市さんから、概況の説明を受けた。三重県東北部に位置する市で、人口は約20万人。高速道路として、新名神自動車道・伊勢自動車道があり、国道1号および23号が市街地を走っている。市の管轄としての道路は総延長242kmほどある。 路面の状態を計る指…

インフラメンテナンスの現場(1)

今回僕が参加させてもらった「インフラメンテナンスの現場を見るツアー」、国交省でこの種の議論をしている、大学教授・建設コンサルタント・経済学者など8名の専門家と、国交省の担当官、サポート役の民間コンサル企業が東京からやってきた。迎えてくれた…

「AIの判断です、以上」は困る(後編)

いわゆるデジタルプラットフォーマーの中には、伸び悩みに苦しんでいる企業もある。労働争議に悩んだり、サブスクの会員減に見舞われたり、ビジネスモデルが揺らいで株価が低迷したりしている。 「メルカリ」の場合は、僕から見るとセキュリティ面の課題が大…

「AIの判断です、以上」は困る(前編)

以前からAI(人工知能)には無限の可能性を感じる一方、不安を覚える人たちもいることは紹介してきた。特に、欧州各国政府の反応は厳しい。「デジタルナチスが、AIを使って市民の生死を判断するようになったらどうするんだ!」との声も理解できなくはない。…

秘密計算という技術

企業間のデジタルデータ共有は、データ活用(&DX)の要諦だが、共有することによって見られては困るものが見られてしまったり、個人情報の漏洩となってしまったりするリスクが存在する。これがネックになって、データ共有が進まないという事例も多い。今回…

「サイバー放火」が起きているのか?

ロシアのウクライナ侵攻は、どう見ても上手くいかない。先週はオデーサ沖で、恐らく対空警戒にあたっていたフリゲート艦<アドミラル・マカロフ>が、地対艦ミサイルの餌食になったとも伝えられる。旧式艦とは言え旗艦<モスクワ>を失って、対空網に穴が開…

朝食会で聞く経団連のデジタル政策

翌朝、早く目覚めて向かったのは<キャピトル東急>。ある団体が企画しているクローズドな朝食会である。昨年末は大臣経験のある国会議員だった。今回は経団連の幹部で、テーマは前回同様デジタル政策。昨年<デジタル庁>が発足し、ようやく何かが動きそう…

金融機関のサイバー影響力

サイバーセキュリティ対策は、大企業なら何とかなるけれど、中小企業にとっては資金・人材・設備が十分ではなく無理だという話は方々で聞く。しかし取引先がサイバー攻撃で操業停止になり、サプライチェーン全体が停まってしまうリスクをほぼすべての(大)…

企業の見える化、弊害も

以前から「サイバーセキュリティ対策に企業が取り組んでいる姿勢や、経営者の考え方などを、外部に情報発信することは重要だ」と申し上げてきた。ともすれば後ろ向きの損金と捉えられがちなセキュリティ対策費を、実質「投資」として経営者に認識してもらう…

「Economic Statecraft」って?(後編)

この言葉、やはり日本国内では安全保障の専門家くらいしか使わないものらしい。適切な日本語訳もないので、原語のまま語られるという。トランプ先生が「Huawei叩き」をしたころから、米国で使われるようになったもの。「あえて日本語にすれば、経済による国…

「Economic Statecraft」って?(前編)

中国を念頭に、一昨年くらいから始まった「経済安全保障」の議論。自民党の政策調査会が「経済安全保障戦略策定に向けて」の中で、資源・エネルギーの確保から経済インテルジェンス能力強化まで16項目を挙げて提言していた。中には「インフラ輸出」という項…

産業政策としての経済安保

先月、経済安全保障関連法案の中心人物だった経産省のF氏が、文春砲の兼業疑惑報道によって辞任している。今国会の重要項目であるこの法案は、推進力に陰りが出たと言われている。さらに東洋経済にこのような記事が出て、関係者の実名(&写真)まで出た。 …

「Emotet」感染再拡大のなぜ?

昨年の11月ころから、PCなどからデータを窃取しメールを通じて感染拡大するウイルス「Emotet」が流行し始めている。あるPCに取りつくと、そこからIDやパスワード、よく連絡している関係先のアドレスなどを窃取し、さらにそのPCの持ち主になりすまして「自己…

サイバー空間での企業結合規制

公正取引委員会との対話の後半は「企業結合規制」が中心になった。独占禁止法のサイバー空間への適用(というより濫用)は、 ・欧州委員会の米国発の巨大IT規制 ・中国政府の国内巨大IT叩き が目立つが、日本政府はどうなのだろうか?独禁法には4つの抑止・…

転嫁円滑化施策パッケージ

岸田内閣の評価は、聞く人によって差異が大きい。国民民主党が賛成に回るなど予算の年度内成立が確実となったように「聞く力」が発揮されているという評価の一方、ワクチンの3回目接種が思うように進まず「菅政権の方がマシ」との意見や、「新しい資本主義…