公正取引委員会との対話の後半は「企業結合規制」が中心になった。独占禁止法のサイバー空間への適用(というより濫用)は、
・欧州委員会の米国発の巨大IT規制
・中国政府の国内巨大IT叩き
が目立つが、日本政府はどうなのだろうか?独禁法には4つの抑止・規制機能がある。
・私的独占
・不当な取引
・不公正な取引方法
・企業結合
最後のものだけが事前規制、残りは事後規制である。サイバー空間に対してどんな審査や調査をしているかと聞くと、主に<プラットフォーマー>に関するものだという。彼らにとっては新しい分野なので、まず公取・総務省・経産省合同で「デジタルプラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を立ち上げたのが2018年。「特定プラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律」が施行されたのが昨年2月である。
どんな審査をしたのかというと、この2年余りで1ダースほどの例を教えてくれた。主としてオンラインショッピングの出店に関するもの(BtoC)が多く、ほとんどは「自主的な制度改善」で審査を終了している。
僕が知りたかったのは、企業結合の案件だったのでそれを聞くと、3件教えてくれた。
・類似の商品、役務を提供しているセールスフォースとスラックの統合
・Googleとフィットビット統合でデジタル腕時計市場の独占の恐れ
・ZホールディングにLINEが統合されニュース配信など3事業で独占の恐れ
いずれも、各社が説明を尽くし、改善をしたので審査は終了している。公取によれば、同業同士の統合(水平統合)だけでなく別業態や補完事業の買収(垂直もしくはナナメ統合)が目立つのがこの業界とのこと。公取は、よく市場を局所的に狭めて、シェアを大きく見せて審査すると言われるが、そんなことはないし、シェアだけ見ているわけではないと説明した。
しかし「デジタル腕時計市場」など局所化の極みではないかと、僕は思う。サイバー空間は普通の人が思っているよりずっと広大だ。GAFAやBATでも、巨大空間の一部でシェアを獲っているいるにすぎない。売り上げが大きいのは世界中で事業しているから、株価総額が高いのは市場(投資家)が期待しているからだ。
ある業界団体幹部は「公取は市場を局所化するのが得意」とため息をつきました。再度申しあげておきたいのは「サイバー空間の広大さ」ですよ。