Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「Economic Statecraft」って?(後編)

 この言葉、やはり日本国内では安全保障の専門家くらいしか使わないものらしい。適切な日本語訳もないので、原語のまま語られるという。トランプ先生が「Huawei叩き」をしたころから、米国で使われるようになったもの。「あえて日本語にすれば、経済による国家運営法だね」と教えてもらった。

 

 経済安全保障議論が始まってからの、日本国内での反応も聞けた。先端技術開発や防衛関連の人たち、基幹インフラに該当する事業者の上層部などは「どういう制約がかかってくるのだろうか」と不安を抱えて関心を示している。しかし一般市民は「俺には関係ない」と気にもしていない。

 

 僕が気になっていた「経済安全保障の名目で国境にカベを立てることは、これまで経済界が望んでいた自由貿易に反するのでは」との問題意識については、

 

・「Economic Shield」になってはいけない。

・日本だけで全部を賄う必要はない。

 

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 との意見が聞かれた。特に日米関係は「菅・バイデン会談」以降、強固になった。「Partner」から「One Team」になったので、日米(あるいは英らも加えて)で必要な資源・資材が揃えられればいいということだ。半導体でいえば、日本の強いところ(製造装置など)もあるので、日米産業界が共同してサプライチェーンを賄えればいいというわけだ。

 

 「One Team」ならインテリジェンス共有もできるのかなと思っていたら、そこにはやはりカベがあるとのこと。例えば基幹インフラだが、これを支えているのはほとんど民間。日本の情報管理制度としては、公務員向けの特定秘密保護法があるが、民間人には適用されず、公務員もポストが代われば機密に触れる資格を失うこともある。

 

 やはり官民含めた、個人に紐づく「セキュリティ・クリアランス制度」が必要なのだ。ただ、特定秘密保護法を導入する際にハレーションが大きかったことから、これを民間にまで拡大(して民間人を機密漏洩で罰)することには、政界も及び腰らしい。

 

 最後にある有識者が「米中対立の平時(精々Cold War)を前提にしていた経済安保議論だったが、ロシアのウクライナ侵攻で有事(Hot War)になってしまい、大きな修正が必要かもしれない」と言っていた。日本における「Economic Statecraft」とは何か、真剣な議論を民間含めてすべき時かと思います。