Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

インフラメンテナンスの現場(3)

 苦しい自治体のインフラ(特に議論したのは道路)メンテナンス、費用については国が補助したり、発注形態を変えるなど現場の工夫で乗り切ろうとしている。残念ながらDXによる抜本合理化には手が付いていないようだが・・・。

 

 次の論点は、技術とそれを支える人材について。先週熱海の市役所には土木技術者が一握りしかいないと聞いたことを紹介したが、どの自治体も技術者の確保には苦心している。技術者育成の専門家が、鈴鹿市さんと亀山市さんに技術者の充足具合を聞いた。

 

鈴鹿市 人口約20万人、市役所の技術者200名ほど、うち土木技術者が半分くらい。

亀山市 人口約5万人、土木技術者は20名あまり。

 

 土木技術者の対人口の比率はほぼ同じ。しかし規模の法則が成り立って、鈴鹿市でできることが亀山市では難しい。そこで、市内をいくつかに区切り民間事業者(委託先)にほぼすべてを任せる方式でしのいでいるという。亀山市よりさらに人口の少ない(約3.5万人)の熱海市ではむべなるかな・・・。

 

    

 

 かつては大学の土木工学科の卒業生は、地元自治体に就職する人が多かった。僕の高校・大学の同級生も、一宮市役所に入っている。今は大学の土木工学科卒業生は地元に残ってくれない、高専もどの街にもあるわけでもない。工業高校の卒業生を奪い合っているのが現状らしい。

 

 それでも何とか若い人を獲得して教育しようとするが、現場の技術者の高齢化も進んでいる。定年退職した人を再雇用することで、なんとか員数を確保しているわけだ。専門家からは「中途採用をもっと拡充しないといけない。採用条件が40歳未満という自治体もあるが、55歳でもOKに(規制緩和)すべきだ」との意見も飛んだ。

 

 僕は自治体のDXは「電子自治体」だけではなく、インフラメンテナンスなどの現場のDXも重要と思っていたから「ちなみにデジタル系の技術者採用はどうですか?」と聞いた。しかし電気系技術者はいるが、情報系技術者は採用したことがないとの答え。電気系技術者などを情報系の研修に出して、技術習得させるのが精一杯だという。

 

 いくつかの大学で臨時講師など務めて、文系も入れて情報学部を作りました・今度データサイエンス学科を新設します・ウチの目玉は情報学環です・・・などという供給側の話ばかり聞いていた。今、地方には人材が残らないという話をリアルに突き付けられて戸惑ってしまった。

 

<続く>