Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

秘密計算という技術

 企業間のデジタルデータ共有は、データ活用(&DX)の要諦だが、共有することによって見られては困るものが見られてしまったり、個人情報の漏洩となってしまったりするリスクが存在する。これがネックになって、データ共有が進まないという事例も多い。今回説明を受けたのは、データそのものを共有の前に暗号化してしまい、漏れにくくする手法。
 
 DSA(Data Society Alliance)という団体が、この技術「秘密計算」の適用・普及の努力をしていて、話を聞く機会があった。「秘密計算」のいいところは、暗号化されたデータを復号化することなく計算して、例えば平均値など計算できること。
 
・データの中身を見せないで結合できる
・セキュリティデータ(例:鍵)を暗号化したまま利用できる
 
 から、データプライバシーとデータセキュリティを両立させ、DFFTの構築に資する技術と考えられている。10年以上前から「知る人ぞ知る」技術であるが、ようやく政策研究者の注目も集めるようになってきた印象。暗号化したままディープラーニングにも使えるというので、ニーズが高まってきたようだ。
 

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 もちろん課題もあって、
 
・複雑な仕組みであり一般の人には理解が難しい。どう社会の認知をえていくか
・スキームが多種あり、個々に普及していった後、相互にどのように連携するのか
 
 などがある。技術だけではなく、法制度や経済合理性など社会実装に向けた検討・活動が必要である。例えば個人データの統計化・匿名化・仮名加工化に秘密計算化(仮称)が加われば、安全・安心により意味ある活用ができる。
 
 法学者からは「暗号化したからといって個人情報保護法の適用除外になるとは限らない。まず企業の技術情報や営業情報などへの適用から始まっていくのではないか」との意見があった。視聴者からは「計算できるのなら本当に暗号化したと言えるのか?」との疑問も呈された。
 
 技術開発・標準化動向・実証実験などを紹介してもらったが、普及に重要なのはアプリケーション事例。今回は、医療機関間のゲノム分析協力・創薬業界の知見データ共有・銀行間の振り込め詐欺データ共有・クラウドサービスの安全管理・流通卸と小売り間のデータ共有などが紹介されていた。
 
 データ活用拡大への新しい技術、開かれた議論で社会の容認を得て、活用できるようにしたいものです。