Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

転嫁円滑化施策パッケージ

 岸田内閣の評価は、聞く人によって差異が大きい。国民民主党が賛成に回るなど予算の年度内成立が確実となったように「聞く力」が発揮されているという評価の一方、ワクチンの3回目接種が思うように進まず「菅政権の方がマシ」との意見や、「新しい資本主義」が一向に見えてこないとの批判もある。

 

 特に売り物だった「新しい資本主義」については、話題となった「金融資産課税」が早々に消えるなど「しびれがきれた」と今困っている人たちの支持が離れたようだ。今回、公正取引委員会の人から話を聞く機会があり、「パートナーシップによる価値創造ための転嫁円滑化パッケージ」を教えてもらった。大企業と取引先の中小企業の間で、適性な「価値の転嫁」が行われるようにするという政策群のことだ。中味は、

 

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1)大企業の適正な配分促進(不適正な配分の是正)を目的に、大企業には法令順守・自主点検を求める。

 

2)中小企業向けに公取中小企業庁が「違反行為情報提供フォーム」をWeb上に載せて情報提供を求める。

 

3)関連して独占禁止法を執行強化する。優越的地位の濫用の実態調査・優越的地位濫用未然防止調査対策室の設置をして、(それで不足なら)独占禁止法自体の改正も検討する。

 

4)下請法についても同様に、「買い叩き」の恐れがある事例を公開するなど執行強化を図る。

 

 日本でデフレが続いているのも、企業で働く人の給料が上がらないのも、大企業が取引先に適正な配分をしていないからだと言いたげである。だから、独占禁止法や下請法の執行強化を図るということだ。法改正でなく執行強化というのが、いかにも日本らしい。「おめこぼししてやっていたけど、上(官邸)がうるさくなったから、取り締まることにしたぜ」というわけ。

 

 今月、トヨタ自動車の全工場が停止する事態になった。取引先のK社がサイバー攻撃を受けてのこと。僕は公取の人に「サプライチェーン攻撃のリスクが高まっているから、取引先への要求(セキュリティ対策)は強くなる。これも優越的地位の濫用と見られては、業界全体が危うい」と苦言を呈した。

 

 回答としては「公取の相談室は下請けだけに開いているものではない。ここまでなら濫用ではないかを発注側が確認するためにも使ってほしい」だった。結局は、やってみないと「執行強化」のレベルは分からないということですね。