3人の少女が殺されたというのは、確かに痛ましい事件である。先週、英国中部サウスポートで子供向けダンス教室に少年が押し入り、ナイフを振るって6~9歳の白人少女を殺し、大人を含む10人にけがをさせた。少年は取り押さえられ警察署に拘置されたものの、未成年のため氏名等は公表されなかった。
SNS上で「犯人はイスラム教徒の移民だ」との説が流布(*1)され、極右の人たちが怒りのデモを起こした。曰く、
・不法移民のボートを止めろ
・不法移民を国外に追い出せ
なのだが、やがて「不法」がとれてしまい、移民二世・三世を含む特にイスラム教徒全体の排斥運動になった。モスクにレンガを投げたり、警官に暴力を振るったり、近隣の街だけでなく全土に暴動が広がっている。ガザ紛争に絡んでムスリムの支持を失った(*2)とはいえ、保守党よりは移民に寛容とされる労働党スターマー政権にとっては、最初の難題といえよう。
英国で極右主義者が暴動、逮捕者100人以上-虚偽情報が反移民扇動 - Bloomberg
ただし実際に拘束された少年は、ルワンダ出身の両親から英国で生まれた17歳の移民二世。ルワンダにはキリスト教徒が多いため、イスラム教徒ではない可能性も高い。不満の空気が充満していると、わずかな火花が大爆発を起こすことがある。ある意味火花はウソでもいいのだ。
英国社会には、外部からは見えにくかった「合法かもしれないが、侵略してくるムスリム勢力への不満」が充満していたものと思われる。それに(この記事で言う)右派系のアカウントからのSNS投稿が火をつけた形だ。
3日の時点で逮捕者は100名を越え、どこまで広がるかわかりません。誕生したばかりの新政権が揺らぎ、<リフォームUK>のような勢力が伸長してくるかもしれません。
*1:ロシア発のフェイクニュースとも伝えられる