昨日紹介した米国共和党副大統領候補ヴァンス氏の「英国はイスラム主義の核兵器保有国」発言だが、Jokeだとしても笑えないもの。現実には、英国でムスリムたちの投票先が無くなりつつあるのだ。積極的にイスラエルを支持し、ネタニヤフ政権を擁護してきた保守党には投票できない。しかし、今回地滑り的勝利をした労働党も、ガザ地区で核兵器を使うことも容認する議員まで出て、ムスリムは怒っている。ちなみにスターマー党首の奥様はユダヤ人とのこと。
イギリス総選挙、大きく動いたムスリムとユダヤ系の票 今後も続くのか - BBCニュース
また<リフォームUK>のような右翼政党も、ムスリムには困った存在。結局、無所属候補者への投票が多かったらしい。上記の記事によると、ムスリムが3割を占める選挙区では、労働党の大物(影の主計長官)が無所属候補に敗れている。
労働党としては、ユダヤ人の票を取り返すことはできたのだが、必然としてムスリム票は失ったことになる。これがスターマー党首自身、前回の惨敗選挙より得票数を落とした原因である。
スナク政権終盤、保守党もコア支持層に向けた政策を連発(*1)した。スターマー政権も、多くの課題を抱えて支持拡大に向けた政策の絞り込みをしなくてはなるまい。その中には、ムスリムのためになるようなものはおそらく入ってこない。
先行指標として考えられるのは、すでに労働党政権になっていて、今般破綻の危機にあるウェールズ。刑務所が満杯で刑期未了でも釈放したり、入院するために数ヵ月待たされたり、社会全体が機能不全を起こしている。贈賄事件なども表面化して、自治政府首相以下4閣僚が辞任に追い込まれた。イングランドが支援をして立て直せるのか?支援をする側のイングランドにも同様の問題があるがどうするか?
最悪のシナリオとしては「あれもこれも、全部ムスリムが悪い」キャンペーンが巻き起こって、社会が分断されること。そうはなってほしくないのですが、ファラージ君あたりが扇動して、保守党の一部が乗ってきたりすると、予断を許しませんね。
*1:不法移民のルワンダ移送、徴兵制復活等