Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

カブールが陥ちた日

 アフガニスタンは「文明の十字路」である。かのアレクサンダー大王東征以来、幾多の勢力がここに侵攻、激烈な闘いを繰り広げた。19世紀には大英帝国がここで痛い目に遭う。シャーロック・ホームズがワトソン博士に初めて会った時「アフガンで負傷したね」と言ったように、軍医も負傷するほど危険なところだった。

 

 20世紀には地上軍では世界最強のはずだったソ連軍が、空飛ぶ戦車「Mi-24ハインド」まで投入しながら敗れ去った。この負け戦はソ連崩壊に繋がっていく。そして21世紀、これも世界最強である米軍が、20年この地で闘い、来月の完全撤退の運びとなった。戦闘用ドローン「プレデター」などのハイテク兵器も、AK-47を携えたゲリラを駆逐できなかった。

  

 少なくとも「ビンのフタ」の役割は果たしていた米軍がいなくなれば、反政府勢力「タリバン」が台頭してくるのは自明の事。米国は現地での協力者などを米国含めた他国を逃がし始めていた。毎日のようにどこかの州都がタリバン勢力に支配されるとのニュースがあった。米軍が肩入れしてきた「政府軍」の頼りなさが目立ち、首都カブールには避難民が殺到してきた。

 

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 状況は1975年のサイゴン(現ホー・チ・ミン)に似てきた。アフガニスタン政府は少しでもタリバンの侵攻を遅らせようと、市民に武装して闘うよう求めていた。しかし、戦意の低い正規軍が先を争って逃げ回るような状況で、市民が立ち上がっても効果はあるまい。むしろ、タリバン側に立って武器を取る市民の方が多いように思う。

 

タリバン、アフガニスタンでの「勝利」を宣言 ガニ大統領の出国後に首都掌握 - BBCニュース

 

 そして今日ついにタリバンがカブールに入った。各国大使館要員やガニ大統領はすでに出国している。タリバン政権ができるだろうが、イスラム原理の色濃い教義が全土を支配することになる。すでに中国はタリバン幹部のもとに使節を送って「戦後」に向けた交渉を始めている。習大人にとってこの地は「裏庭」であり、「一帯一路」の重要エリアでもある。

 

 問題は中国が新疆ウイグル等で行っている弾圧、イスラム教徒を迫害しているわけだから、タリバンも習大人に全面協力はすまい。英国・ソ連・米国が去ったアフガニスタン、最後は中国がやってきて・・・さて、どうなりますかね?