Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

経済安保上の半導体産業

 代表選を行う羽目になった立憲民主党をしり目に、絶対安定多数を確保して「みそぎを済ませた」と政府・自民党が本格始動している。手始めは半導体産業の国内誘致、これを経済安全保障担当の小林議員が発言したことに、大きな意味がある。

 

半導体製造「世界に匹敵する支援を」 経済安保相: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 もともと自民党の「新国際秩序創造本部」が経済安全保障強化の提言をしていて、体制が、岸田本部長・甘利座長・小林事務局長だった。小選挙区での敗退によって甘利議員が幹事長を辞職したつまづきはあったが、いよいよ経済安全保障の具体策に着手しようというわけ。来年の通常国会には「経済安全保障推進一括法(仮称)」を提案する構えだ。

 

 上記の記事で、小林大臣は「日本としても世界に匹敵する支援措置(予算・税)でコミットする」と述べている。この言葉だけからは、通常の産業誘致としか読み取れない。しかし単なる産業振興なら、経済産業相の担当だろう。どうしても経済安全保障からみの誘致と見てしまう。

 

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 では半導体産業、今回は台湾のTSMCの工場を国内に誘致する件に助成金や優遇税制をするものと思われるが、これが経済安全保障なのかどうかは議論がある。僕自身は「疑念」すら持っている。

 

 TSMCは、世界一の半導体「製造」企業であることは確かだ。しかしそれは世界中の半導体「設計・開発・販売・利用」企業が、製造過程をアウトソースしているに過ぎない。垂直統合型の半導体産業として、世界一というわけではないのだ。

 

 今、世界的な半導体不足で、例えば自動車産業が生産できずにいる。だから半導体産業を国内に誘致しないと、産業基盤が崩壊する・・・という理屈は少し過敏に過ぎるのではなかろうか。自動車・ロボット・スマホなどあらゆる産業に適用できる半導体を、TSMCの当該工場で生産できるわけではないのだし。

 

 そもそも自民党の提言では、経済安全保障の範囲が広すぎると僕は思っている。エネルギーや食糧の自給率は低く、供給が止まれば直ちに市民生活に影響がある。これらは経済安全保障の観点から改善が必要だ。しかし、半導体ってそこまでの意味があるのだろうか?

 

 「Global & Digital」の流れで、国境の壁を下げようと僕らは言ってきました。それに経済合理性があるからです。経済安全保障の対象範囲については、議論が必須ですね。