先日、与党の税制調査会が「税制改正大綱2022」を公表した。噂の「富裕層への金融所得課税」は盛り込まれず、検討するとしながらも時期は明示されなかった。とりあえず、金融市場はほっと胸をなでおろしている。決まったのは、
・住宅ローン減税 制度は継続するが控除率は引き下げ
・「COVID-19」対策 商業地固定資産税、航空燃料税などの見直し
・デジタル化等特例 5G促進税制、ベンチャー支援、沖縄酒税見直し
・賃上げ税制 大企業30%、中小企業40%まで上限引き上げ
などで、カーボンニュートラルや自動車関連税については先送りとなった。目玉は最後の「賃上げ税制」なのだが、数字的には大盤振る舞いに見えても、中小企業の多くは赤字決算などで税金を払っていない。減税効果は限定的と見るべきだ。沖縄の酒税特例見直しは、現地メディアは非難ごうごうだが、本土の人達にはあまり関係がない。僕もこの報道を聞いたときには特に関心は無かったが、たまたま自民党の大物議員の話を聞く機会があって今回の大綱に秘められていたことを知った。
「実は、予算は政府が決めるが、税制は党が主導する。これは長年の慣習であり、自民党の最重要ミッションである」とのこと。税制として決まったことは上記のようなものだが、文書の中に厳しい文言が見られるという。
・産業界の経営者にはアニマルスピリットが足りない。
・製品サービスのマークアップ率(対原価の値幅)を上げようとしているのか。
と、この20~30年の停滞を招いた消極姿勢を糾弾している。設備投資・研究開発投資も怠り、コストカットだけで株主還元をし、内部留保のみが膨らんでいくという非難だ。自民党税制調査会は、この事態に焦り、その権力を最大限生かすべく上記のような文言を盛り込んだという。
僕は「えー、それで日本の経営者に愛想が尽きたので、経済安全保障を言い訳にTSMCを誘致し、デジタル庁のクラウドに外資を採用するわけ」と思ったが、口には出さなかった。聞くと、自民税調も大物の交代が相次いだらしい。
自民党税調に「異変」 幹部一新、「重鎮」不在で首相官邸と党の綱引きが激化中!: J-CAST 会社ウォッチ【全文表示】
引退・落選・比例復活などで、8人中5人が代わっている。それでも伝統の「力」は健在でしょうから、産業界を叱咤するのはいいとして見捨てないようにお願いしますよ。