Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「産業のコメ」転じて「戦力の要」

 経済安全保障の議論の中で、半導体分野の話題が多くなってきている。僕自身は「安全保障」なら、エネルギー・食糧・水のような市民の生死に直結することが先だろうと思っているのだが、今回の経済安全保障推進法の主旨は<産業政策>に寄っているように感じる。

 

 とはいえ、半導体産業は軍民融合技術分野として非常に重要。ウクライナ紛争でロシアの兵器が思ったほど役に立たない、稼働率が上がらない、旧式兵器を引っ張り出さないといけないようになったのは、電子化された新兵器の自国内製造や補修、運用が難しいからである。

 

 世界最大の半導体ファウンダリー<TSMC>が、リスクの高い台湾にあることの対策として米国や日本に新工場を建設しているのは、特に米軍が危機感を持っているからだ。簡単に言えば「新鋭戦闘機F-35F-22などの電子部品は自国生産したい」ということ。

 

    

 

 ロシアはもちろん、経済力・技術力でも米国に迫っている中国についても、先端半導体は渡さないと、日米蘭が連携した禁輸措置を採り始めた。オランダはいつの間にか半導体サプライチェーンの上流で大きな位置を占めていたようだ。その代表的なメーカーASMLで、中国人の元従業員がデータを悪用していたことが公表されている。

 

半導体露光装置メーカー・ASMLが中国の従業員にデータを悪用されていたことが判明 - GIGAZINE

 

 今回はサイバー攻撃のような手段ではなく、HUMINTによるデータ窃取だったと思われる。包囲網を敷かれた中国側だって半導体技術は欲しい、だからサイバー攻撃を含むあらゆる手段でそれを得ようとしているはず。

 

 先日サイバー防衛系の団体CYDEFの勉強会が開催されたが、講演者はかつて<日米半導体交渉>の民間代表だった人。この2つの分野が急接近してきたのが良く分かる。かつて「産業のコメ」と呼ばれ経済成長の華だった半導体産業は、「戦力の要」として防衛の最前線に出てきてしまったのかもしれません。