WHOテドロス事務局長は怒っているが、カネのある国がワクチンを買い占めてしまって被害の大きな発展途上国にいきわたらないという偏在は確かにある。しかしカネのある先進国にも悩みはあって、集団免疫に向けて少しでも接種率を上げたいのに頭打ち傾向が見られる。感染力の強い「デルタ株」さらにその次には「ラムダ株」も控えていて、経済を回しながら命を守るために接種率向上は政策の中心的課題だ。
すでに3度目を打ち始めた先進国イスラエルからの不協和音は少ないが、日本も含めてワクチン接種を強制するなと言う市民の声は大きい。主な原因はと言うと、
・不妊につながる、DNAが変る、政府のチップを埋め込まれるという誤情報
・宗教的、信条的に拒否している、あるいは「自由」を守るためという思想
・副反応への恐怖感をもたらす報道(例:ドラゴンズ投手の死去)
などがありそうだ。日本政府は「あくまで接種は任意」とのスタンスを崩していないが、欧米各国は動き始めた。
◇米国
懸賞金1万ドルを掲げたこともあったが、今は100ドル進呈の方向。中には1,000ドルの報奨金を払う企業も出た。逆に接種をせずに出社したとして、3名の従業員を解雇した企業もある。特に企業社会で「接種圧力」は強まっているようだ。
◆フランス
飲食店の利用などに「ワクチン接種証明」を提示することが決まり、未接種者から「自由を守れ」との反発を生んでいる。事実上の義務化に対し、国論は真っ二つという。
◆ドイツ
レストランでの食事・病院等への訪問・屋内イベントの参加などにワクチン接種証明か、陰性証明の提示が必要。接種義務化ではないのだが、代替案の陰性証明のためのPCR検査を10月から有料にすることになった。
すでに欧州では、(域内の)外国訪問にワクチンパスポートは使われている。そんな先進国でもまだ接種率は5割(ドイツ)ほど。日本では65歳以上の高齢者では85%が接種していて、ある意味素直な国民なのだろう。同調圧力かもしれないが。
今は20~30歳代に対応するワクチン供給不足が前面に出ている日本の政策課題ですが、やがて全人口の7割は済んだけれど・・・という時期が来るでしょう。その時「義務化」や「アメ&ムチ」をどうするのでしょうかね?