先日、ベーカー・マッケンジー主催・経団連後援の「グローバル競争法セミナー:近時の動向とHOT-Topics」というオンラインイベントがあり、デジタル分野にフォーカスしたものだった。このところ欧米でも中国でも「巨大IT」に制約をかける手段として独占禁止法が利用されている。その取り締まりルールも変化しつつあるというのが趣旨で、この分野にはほとんど知見がないので勉強させてもらうことにした。公正取引委員会の菅久事務総長が基調講演した以外、もうひとつの講演、3つのパネルディスカッションのほとんどの登壇者はベーカー・マッケンジーの人。
◆競争法におけるグローバルの主要な動向
◆「COVID-19」後のグローバルレベルの競争法リスク/執行
◆デジタル環境下でのグローバルレベルの競争法コンプライアンス/調査対応
◆企業統合規制を含むテクノロジー分野での業務提携を取り巻く近時の動向
が個々のテーマだった。ポイントをおおざっぱにまとめると、
・世界が「COVID-19」禍から立ち直ろうとするとき、不正競争のリスクが増え、競争法の役割は高まっている。
・加えて急速に進むデジタル化、政治的緊張、保護主義の流れなどで問題は大きくなっている。
・カルテルには依然厳しい世論があり、M&Aや人事流通なども守るべきルールはある。
・一方でコンプライアンス疲れのような現象もあり、企業はどのようにリスク管理をし、説明責任を果たしていくのかが問われる。
・リモートワークの普及(&デジタル化)によって、監査や捜査もスピーディになる面もあるが、サイバーセキュリティにも配慮しなくてはいけない。
というものだった。「COVID-19」禍、彼らの対象となるような大企業の管理部門では、企業活動の多くがリモートになっている。証拠も事実上サイバー空間の中にしかないし、証言を得ようとしても「ちょっと別室に」というわけにもいかない。どのように機密保持をしながら捜査を進めるかという戦術的な話が多かった。ただデジタル分野については、急速に変化する市場環境に(例えば独禁法適用についても)法執行側も付いて行かないといけないとの公取菅久事務総長の言葉が印象に残った。
<続く>