熱海伊豆山の土石流は、13名の犠牲者、16名の行方不明者をもたらし、まだ捜索が続いている。伊豆山地区ではまだインフラ(水道やバス路線)が停まっていて、ホテル等に避難している人にも疲労の色が見られる。街中の一部店舗では、
「被災者の方は、商品を自由にお持ち帰りください」
などと店頭に掲げているし、報道ヘリが飛び自衛隊のトラックが行きかうなど、ちょっと違った風情をもたらしている。ただ熱海市の大半のエリアは普段通りなのに観光客のキャンセルが相次いで、悲鳴を上げているホテルや商店もある。
その後熱海よりも多くの降水があったエリアが全国に広がり、熱海のニュースは少なくなった。「線状降水帯」がやってきたとは言っても、熱海の降水量は1時間30mmは越えていない。その倍も3倍も降ったエリアがあって、人命こそ失われなかったものの浸水被害や交通途絶が多発している。
この朝、僕は今週唯一の出勤日で「こだま号」に乗ってオフィスへ向かった。熱海駅には、中国地方の大雨で山陽新幹線で運休や遅れが出ているとの表示があった。列車は定刻に来たが、熱海駅を出てからいつものスピードに乗らない。土石流が新幹線の線路をくぐったあたりで、速度を落として運行しているようだ。車内アナウンスがあって、
「安全確認のため速度を落としています。小田原駅には2分ほど遅れて到着」
という。その通りになったのだが、以降も「新横浜駅には2分の遅れ」と繰り返す。たった2分の遅れに「申し訳ありません」を言い続けるのはちょっと過剰サービスのようにも思った。ただかつて「なぜ国鉄は赤字になったか」議論で、有識者が、
「事業コンセプトがダイヤ通り列車を運行することで、ビジネス意識が無かった」
と理由を述べていた。その時代の「ダイヤ至上主義」がまだ残っていると感じた。その後「こだま号」が品川駅で停まってしまったので、ここで降りて山手線に乗り換えることにした。ダイヤ乱れで東京駅新幹線ホームが埋まってしまったゆえの運転停止らしい。
見るとディスプレイ上に、運行状況が表示されていた。昔から言われることだが「新幹線は雨に弱い」。今はテレワーク主体だからいいのだが、昔だったら困っていたかも。そこまで考えて「2分の遅れで謝り続ける」理由がわかった。きっと2分遅れでも怒る人がいるのだ。
年も取りましたし、2分を争わなくなっただけ、僕も成長しましたかね。