Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

出井さんの遺志を継いで

 先週、寂しいニュースが入ってきた。元ソニーCEOで、ベンチャー育成機関<クォンタムリープ>を率いておられた、出井伸之氏が亡くなられたのだ。20世紀の終わりごろモノづくり会社の先進企業ソニーを、インターネットの会社にすると宣言した人だ。小泉政権にも深く関わられて、僕らもそのお手伝いをしたことがある。

 

 日本政府の「IT総合戦略」は、今も改訂が続き内閣官房IT総合戦略室に加えて「デジタル庁」ができたことで、実行力の強化が期待できている。この基になったのが、森内閣で決定された「IT戦略:e-Japan」だった。短命に終わった森内閣を継いだのが小泉内閣。総理ブレーンだった竹中教授らもデジタル革命を唱え、この戦略をグレードアップすることになった。

 

        

 

 新戦略「e-JapanⅡ」を策定するにあたり、出井さんが主張されたのが「官僚に筆を持たせないこと」だった。学界や産業界からデジタル政策に詳しい人が集められて、戦略案の執筆にあたった。僕もその末席に名を連ね、より具体的な戦略提案(実質作戦・戦術級だったかもしれない)をした。僕の担当したのが文書電子化で、電子文書を紙文書と同等なものにするための法「e文書法」制定に繋げることだった。

 

 官僚の助けも受けて、素人たちが苦労しながら戦略文書をまとめた。なんとか完成にこぎつけた後、当時のソニービル地下のレストランで、出井さんに慰労会を開いていただいた。

 

 「戦略は出来上がったが、それをどうやって実現するか、社会に根付かせるか。これからが勝負だ」と仰っていたと記憶している。その後の20余年、僕らの思い通りに社会全体のDXは進まなかった。それでも、先週「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定された。

 

デジタル社会の実現に向けた重点計画|デジタル庁 (digital.go.jp)

 

 この中に、以前紹介した「ユニバーサルメニュー普及協会」の主張である自治体システムの標準化に向けた業務等への付番が盛り込まれている。「行政サービスに関しデータの標準化・体系化や識別番号の付与に向けて検討する」との文言が入っていた。これを主張したのは、出井さんの指揮で「e-JapanⅡ」を書いた人たちでもあります。デジタル革命への遺志は、大事に継いでいきたいと思います。