Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

APEC/ABAC2021報告会(前編)

 かつて僕が関わってた国際会議の中で、一番スケールが大きいのは「APEC:アジア・パシフィック経済協力機構」。環太平洋諸国がほとんど入っていて、日米中露が全部顔を合わせる機構など、国連以外になかなかない。数年前トロントの地に出かけて行ったのも、TPPに盛り込んだ「国境を越えるデータの確保」を事例を持って世界経済発展に寄与すると説明するためだった。

 

 正確に言うと、僕が話をした場はAPEC(政府間会合)ではなく、そのビジネス側ABACの会合。ただこの2つはコインの裏表のようなもので、分離は難しい。ABACでまとめられた提言は(太平洋)産業界全体の意見として、各国首脳に手渡される。

 

 久し振りに経団連会館で、リアル会合としての「APEC/ABAC報告会」があるというので出かけて行った。2021年のAPEC議長国はニュージーランド。優先課題として「COVID-19からの回復」を掲げ、経済貿易政策の強化・包摂性や持続可能性の向上・イノベーション&デジタルへの対応によって「回復」を後押しするというもの。11月の閣僚会合では、

 

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サプライチェーンの強靭化

・ワクチンへの平等なアクセス

・貿易円滑化措置の推進

・デジタル化

・アジア太平洋自由貿易圏構想(FTAAP)実現に向けた協力

 

 などが話し合われたという。この会合に向けて、ABACでは5つのWGを設置して、産業界の提言をとりまとめたとの報告があった。

 

・地域経済統合WG FTAAP、WTO、サービス(貿易)

・持続可能性WG 気候変動対策、再生可能エネルギー、食糧

・包摂WG (先住民等の)社会経済発展、(女性の)社会参画強化、中小企業支援

・デジタルWG 中小企業のDX、デジタルシステムの相互運用性、先進技術

・金融経済産業部会 「COVID-19」後の経済回復、構造改革、災害復興計画

 

 各WGでは、上記のようなテーマを掲げて議論を重ねたという。地域経済統合WGの議論で僕が気になったのは、WTO支持、自由貿易堅持を主張するABACに対して、政府側の関係者の意見がいまいち煮え切らなかったこと。官僚一流の「耳に優しく、結局何を言っているか不明」の言葉と、僕には聞こえた。これは自由貿易と経済安全保障のバランスをどうとるか、難題が控えているからだと思われる。加えて、WTO改革だって本当に上手くいくのか、不透明だ。

 

<続く>