このシンポジウムがテーマの一つに「経済安全保障」を選んだのは、九州の抱える地政学的リスクが大きい。古来日本への外国勢力の侵攻は、九州方面からとしたもの。元寇がその典型例だが、大和朝廷や豊臣政権の半島進出の拠点にもなっている。サイバー空間に地理的条件はないとはいえ、九州市民のリスク意識が高いのは当然だろう。
僕はまず、経済安全保障推進法の基本項目4点につき、サイバーセキュリティとの直接的な関連性について説明した。
1)重要物資の供給
直接的な関連は△。半導体が注目されているが、ソフトウェアやサービスも含め対象は非常に広範囲になる。
2)基幹インフラの安定
重要インフラ企業と関係機関にとって◎。ハイブリッド戦の最大目標であり、主要サプライヤ含めた「Resilience」向上が求められる。
3)先端/重要技術の開発
R&Dおよび関係機関にとって○。R&Dデータの防御は当然だが、海外企業や教育機関含め、連携先のセキュリティ体制確認も。
4)特許の非公開
やはり直接的な関係は△。典型的な防衛技術などが対象か?特許データそのものについては、前項目同様防御要。
そして、論点を3点提示して、あとは言いたい放題言ってもらうだけ。
1)基幹インフラを「ハイブリッド戦」対応にするには
2)海外子会社や提携先、共同研究先をどうガバナンスするか
3)地域の「Security Community」には何が求められるか
すると、方々から手が上がった。議論にも発展し、面白い意見が聴けたが、ここでは参加者のタイプによって異なるスタンスが見られた。まずネットワークやインターネットの技術系専門家は「もともとなんでもやりたい放題なのがサイバー空間。何があってもおかしくないのだが、一般の人達の危機感が希薄すぎる」と言い、基幹インフラ事業関係者は「今後監督官庁等から具体的にどのような制約が課せられるのか心配」とプラクティカルな不安を口にする。
<続く>