Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

何をもって<国産クラウド>とする?

 経済安全保障推進法は成立した。4つの基本項目(重要物資の供給・基幹インフラの安定・先端/重要技術の開発・特許の非公開)は挙げられている。今は、その具体的な影響範囲や運用法の細部の議論に論点が移っている。今月4日付けの<日経ビジネス>は正面からこの問題を捉え「経済安保とは何か~分断する世界で生き残る知恵」とのタイトルを付けている。

 

 具体論の中には、僕の専門であるデジタル化やサイバーセキュリティに関する項目が多い。そのうちの一つに、クラウド問題がある。クラウドの利用はずいぶん広がっていて、重要物資といえるし重要な基幹インフラになっている。技術革新も日々進んでいるし、当然特許もからんでくる。だから経済安全保障推進法の施行にあたっては、クラウド問題は避けて通れない。そんな中、経産省が「国産クラウド開発促進」と言い始めた。

 

国産クラウドの開発促進へ 経産省、経済安保を重視 | 共同通信 (nordot.app)

 

 <日米経済2+2>でも重要物資の共同での確保を謳うくらいだから、米国が同盟国ではないと危惧しているわけではあるまい。であれば、これは安全保障というよりは産業政策としての国産化の色彩が濃いような気がする。

 

    

 

 クラウドサービスは、米国に本社を置く巨大IT3社の寡占状態にあるのは確か。だからといって、膨大な開発費・設備費・人材投入を必要とする高度なクラウドサービスを民間企業に求めるのは、経済合理性に反すると思う。すでに20年前に、ある巨大IT(当時はそう呼ばれていなかったが)企業の電算設備量は、僕の常識の2ケタ上を行っていた。今から量の戦いで先行3社に追いつけるのは、日本に限らずどこの国の企業でも困難だ。

 

 それに「何をもって国産クラウドと言うか」が分からない。日本にも、質の高いクラウドでユーザの高評価を得ている企業もある。しかしその企業の株主の半分くらいは外国人、役員にも研究開発者にも外国人がいる。

 

 物理的に日本にデータセンターを置いているのが<国産>の意味なら、巨大IT3社にも国内データセンター限定のサービスを求めればいい。現に昨日紹介した<デジタル庁>の政府クラウドは、外資2社が採用され日本企業は入れませんでした。<国産>に拘る産業政策が経済安全保障推進法の背骨・・・というのはやめて欲しいと思います。