キーウ(キエフ)周辺のロシア軍占領地域をウクライナ軍が奪回して、戦場になった街の惨状が明らかになった。路上に放置された戦闘車両の残骸、砲塔が車体の隣に並んでいるのは、車内の弾薬や燃料が爆発して砲塔を真上に吹き飛ばしたから。焼け焦げてもう赤さびが目立つようになった残骸からは、車内の兵士が生き残れた可能性は見いだせない。
また路上に放置された、もしくは室内で折り重なるように倒れた死体の多くは、民間人だと思われる。後ろ手に拘束されて「処刑」スタイルで殺されたり、ひどい拷問に遭った死体もあるとの報道だ。これをウクライナ側は「戦争犯罪」として告発、欧米メディアもそれに同調、もしくは強調している。
ロシア軍の所業は許されるものではないが、シリアやチェチェンでは同様の事が起きていた。それが今回白人世界で起きて、報道が世界の隅々まで届いたともいえる。「隅々」と言ったが、届いていないエリアもある。当のロシアにはすでに国営メディアしかないので「ウクライナ&西側のでっちあげ」説が市民に刷り込まれている。インターネット上の情報も検閲されて、真実が自由に流通できていない。

アジア・パシフィック・イニシャティブ(API)の船橋理事長が仰るように、サイバー空間はインターネットではなく「スプリンターネット」になっている。中国・ロシアでは、僕らの思っているような自由な情報流通は望めないのだ。
プーチン大統領の支持率が8割を越えているロシアではいかんともしがたいが、中国でのウクライナ紛争報道はどうなっているのだろうか?聞くところでは、ロシア寄りの報道が多く一般市民はそれを信じている。しかしエリート層はある程度真実を知っていて、中国がロシアに入れ込み過ぎることに危惧を抱いているという。
戦線では苦戦が続き、経済制裁も課せられているロシア。ベラルーシ・北朝鮮といった同盟国はさほど頼りにならない。やはり中国の支援が欲しいだろう。中国が本気でロシアに加担すれば、世界は真っ二つに割れることになる。しかし距離を置くなら、ロシアは、国際社会で孤立した状態になる。国際連合(特に安保理)の無力さは世界が認めるところ、新しい世界秩序に向けた議論では、中国の動向が大きな影響力を持つ。
習大人も一人でそれは決められません。中国市民がどれだけ情報を得て、どういう世論を形成するか。それが世界の運命を決めそうな気がします。