Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

量子技術の官民協議会

 デジタル屋を学生時代からだと50年近く続けてきている僕だが、大学の講義もまるきり覚えていないし、理解できていないのが量子工学・量子力学・量子技術。近年そのセキュリティ性の高さから、量子暗号などの分野に注目が集まっていることくらいしか知識はない。20世紀に半導体技術や化学反応の仕組みの構築に貢献した基礎技術だが、今は、量子コンピュータの研究も進み、通信・暗号・センサー等への応用も期待されている。今回日本政府は、50社ほどの参加を得て量子技術の研究を推進する官民協議会を設立すると発表した。

 

量子技術を官民で研究 政府、トヨタなど50社と協議会: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 協議会では研究推進のために各社の知恵を結集し、集いの場を法人化して研究発展のためのファンド設立も視野に入れているとある。基礎研究については、日本の産業界もそこそこの実績を持っている。例えば東芝の特許保有はハードウェア分野では世界一だそうだし、量子通信・暗号分野に強いと言われている。しかし問題は実用化だ。何度か申しあげているように、研究は実用化して初めて意味を持つ。「何ができる」かではなく「何に使える」かが、より大きな問題なのだ。

 

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 5Gの時同様、中国は国家プロジェクトとしてこれを推進していて、北京~上海間に量子通信網をすでに構築中だという。米国も5Gの轍を踏まないように、昨年6億ドルの国家予算を投入している。

 

 協議会ではこれまで社内に閉じ込められていた研究者が、異分野の研究・技術者と交流して研究を発展させることが期待されている。実証実験も加速できるだろう。ファンドによって重要なのだが予算の付かない研究を続けさせることも出来るかもしれない。しかしそれ以上に期待したいのは、応用分野、より具体的な応用分野の開拓である。そこで政府と協議会のリーダーには、2点お願いしたい。

 

・政府が局地的でもいいから実用化すること。例えば政府の重要情報の保管は量子暗号で守るとか、防衛省等の通信は量子通信を使うとか。

・協議会では技術研究のほかに、経済の専門家も入れて「儲かる量子技術の適用例」を研究すること。

 

 この技術こそ民間が本気になって研究・実用化投資をするように仕向けなくてはいけません。民間は「儲かる」と思わなければ本気になりません。そこを強調しておきたいですよ。