Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

裁判員への巨大な負荷

 「紀州ドン・ファン殺害事件」で元妻が逮捕、送検されている。「4,000人の美女に300億円を見継いだ男」と言われる和歌山県の資産家(当時77歳)が、2018年5月に自宅で死体となっていた事件。死因は急性覚せい剤中毒で、胃の中から覚せい剤が見つかったが、注射跡はなかったという。

 

 当初から55歳年下の妻(3ヵ月前に入籍したばかり)が疑われていたが、直接的な証拠はなく捜査は行き詰っていたように(外野からは)見えた。しかしついに元妻の逮捕・送検に踏み切ったということは、何らかの決め手があったのかと思わせる。

 

「紀州のドン・ファン」2人の夕食狙い覚醒剤混入か 逮捕の元妻 - 産経ニュース (sankei.com)

 

 ただ、これまでの報道を見る限り、直接的な証拠らしいものは見当たらない。心象的には真っ黒なのだが、あるのは状況証拠だけ。

 

・殺害当時、2人きりでいた。

・結婚当時の約束を守らない妻は、離婚を迫られていた。

・ネットで「覚せい剤」を検索していた。

SNS覚せい剤入手を持ちかけた形跡がある。

 

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 遺産は約13億円といわれ、通常なら元妻にはその半分が遺贈されることになる。この記事を見ていて、20年前の同じ和歌山県での事件を思い出した。それは「毒入りカレー事件」、これも有力容疑者が逮捕されたものの直接的証拠はなかった。自白もなく、黙秘したままの被告人の前に、裁判は長期化した。

 

 和歌山地検が提出した証拠は1,700件にも及び、ち密に「カレーに毒を混入できる機会があったのは被告人だけ」という証明法を用いた。一審だけでも開廷数は100回近く、結審までに3年半を要した。判決は有罪・死刑で、被告人側は控訴・上告をして最高裁でも無罪を主張して争った。全部で7年かかった裁判は、一審判決通りで終了。被告人は死刑囚として収監されている。

 

 さて問題は今回の裁判が「毒入りカレー事件」の裁判時にはなかった裁判員制度のもとで行われるだろうという事。仮に100回の開廷、3年以上の裁判にどれだけの一般市民が付き合えるのだろうか?被害者は一人だから死刑判決はないかもしれないが、状況証拠だけで「有罪・無罪」を定めるだけでも、相当のプレッシャーだ。ましてやメディアも注視している事件だし。

 

 容疑者の自白や共犯者が見つかり証言するならともかく、これは難航しそうです。SNSデータの証拠性についても争われるかもしれませんね。