Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ASEAN+5の自由貿易協定

 東南アジア諸国連合ASEAN)が、より大きな自由貿易圏を求めて、6ヵ国(日中韓、インド、ニュージーランド、オーストラリア)を加えたRCEPの実現を目指したのは、足掛け10年前になるという。僕自身も、5年ほど前にジャカルタで行われた分科会と東京で行われた交渉官会合にスピーカーとして参加したことがある。僕の役割はRCEPに、TPP第14章で規定した、

 

・データの越境流通の確保

・サーバー設置の強制禁止

ソースコード開示の強制禁止

 

 という3条件を入れ込む必要があると説明することだった。暑さのまとわりつくジャカルタまで出かけ、さてプレゼンしようとすると中国代表が立ち上がりニコニコ笑いながら名刺交換だけしていなくなった。僕が何を話すかは承知していて、「Great Fire Wall」でデータ流通を禁止している国として「聞く耳もたない」ことを態度で示したものだ。東京ではより高位の交渉官会合ゆえ、さすがに退席はしなかったが中国の交渉官は僕と視線を合わせなかった。

 

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200827/k10012586811000.html

 

 それきりRCEPのことは忘れていたのだが、いよいよ年内妥結との報道があった。ただその中にインドの姿がない、ASEAN+5の協定になりそうだ。交渉をしてきた16ヵ国の中では、中国とインドの人口(市場)は頭抜けている。もともと自由貿易圏には消極的だったインドだが、もし締結すれば対中貿易赤字が拡大するとの懸念があって、交渉離脱をほのめかして閣僚会合などにも参加しなくなった。

 

 インドと国境付近でもめている中国の方は、RCEPに乗り気。ASEAN各国も、中国貿易の関税が下がるので大乗り気だ。ただちょっと待ってほしい。香港や南シナ海で不穏な動きを見せている中国こそRCEPから外し、インドを入れたASEAN+5国で貿易圏を作るべきなのではなかろうか。

 

 中国は僕の印象では、データの越境流通は認めない国。もちろん国外から取るのはいいのだが、国外に持ち出されるのは断固死守するのだ。今回のRCEP協定にこの点はどう書かれているのだろうか?自由流通だからと日本はじめ他国のデータは取り放題、でも出すのは舌ベラすら出さない・・・では困りますよ。