Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ソフトパワーによる闘い

 「米中新冷戦」とも呼ばれる時代になった。アラスカで行われた両国の外交・防衛TOPの会談は大変険しいものになり「中国には中国の民主主義がある」と妥協の余地はないことを明確にした。かつては、中国は経済成長すれば(欧米から見て)普通の国になると考えていた米国人もいたが、もうそんな幻想は吹き飛んだ。

 

 先週もバイデン大統領が「民主主義対専制主義の対決だ」と非難すると、習大人が「お前の国に人権など他国にいう資格があるのか」と米国の人種問題などを挙げて反論している。もはや、容易なことでは折り合うことはできないだろう。

 

 先日のニュース番組では「ソフトパワーによる闘い」だと、この対立を評していた。物理的・技術的・経済的な闘いでは中国は米国に迫るか、分野によってはリードしている。しかし国としての魅力としては、中国は米国にとても及ばないとニュース解説が言う。ASEAN諸国など、経済的結びつきがあるので中国には秋波を送るが「カネの切れ目が縁の切れ目」になることは疑いがない。

 

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 香港・新疆ウイグルの弾圧だけでなく、国進民退で大企業・先端企業を叩く姿勢などは、産業界としても納得できるものではない。だから人種問題・格差問題などを抱えていても、米国陣営の方が「魅力的」なのだという。これが「ソフトパワー」。

 

 今回「米中対立」について、米国の外交・安全保障の専門家に直接話を聞く機会があった。もうこの業界に40年近くいるというユダヤ系と思しきスピーカーは、旧冷戦と現在を比較して、こういった。

 

◆旧冷戦

 米ソの両陣営間では貿易などほとんどゼロ、最大の脅威は核兵器の開発・改良・増産・配備だった。相互確実破壊(MAD)が頂点になった段階で、終わりが見えた。

◇米中対立

 米中相互に膨大な貿易がリアルに動いている。容易にDecoupleできない。核ではなくサイバー空間の脅威が高まっていて、宇宙を含めた6G技術開発が死命を制するかもしれない。必要なのは「ソフトパワー」、日本はその最前線にある。

 

 とのこと。彼は旧冷戦時代、米国陣営は中国を味方につけるため、諜報能力を含む多くの機密を中国に渡し、今それに苦しめられているという。

 

 先日の日米インスティテュートの会合でも「米中対立にインドを抱き込もうとすると、次の競争相手はインドになる」との意見があった。なるほど、1980年までにそんなことがあったのかと、勉強させられました。