トランプ2.0政権が、世界秩序を大きく変えた。一番やりたいことは国内の減税で、そのためには政府支出を削減しないといけない。DOGE省は頑張っているが、やはり最大の支出削減項目は軍縮。東アジアの戦力強化も中止するし、場合によっては在韓米軍の撤退もあり得る。NATOからは脱退し、欧州のことは欧州に任せたいのだろう。中東や東欧の紛争を収めたら、米ロ中の三ヵ国で軍縮のディールをするつもりだ。
日本も、今やGDP2%の防衛費に難色を示す人は少なくなった。欧州各国も軍事費増に舵を切った。そしてあの、
・借金嫌い
・防衛費そこそこ
・米国の核の傘を頼り
・ロシアからエネルギーを買う
としていたドイツも、財政規律を破る憲法改正に踏み切り、本気で軍備増強に邁進することになった。
ドイツ連邦議会、財政規律緩和の憲法改正案可決 軍事支出拡大へ | ロイター

WWⅠで敗れ巨額の賠償金を払いながら、1933年にヒトラーが首相に就任するや1939年には一大陸軍国に生れ変わったドイツである。今回も数年で軍事力を飛躍的に高めるかもしれない。すでに自前の核武装の議論もあるようだし、製造業が衰退してモノづくりが出来なくなった米国より、大きな潜在能力がありそうだ。
大ロシア主義を掲げ「ロシア人がいるところはロシア」との考え方でウクライナに侵攻したプーチン先生だが、結果として、
・ユーラシア大陸最強の敵ドイツを覚醒させた
ことになる。戦術的にウクライナの1/4を嚙み取り勝利したとしても、戦略的には敗北したことになるかもしれない。ただドイツ側にも懸念材料はある。相対的に問題が小さくなった移民問題だけでなく、経済全体への影響だ。政府支出が増えるので、当座のGDPが上昇する。いわば経済のミニロシア化である。ロシアはすでに政府支出の1/3が軍事費(*1)、GDP比だと7%強にあたる。経済制裁もあってインフレがひどく、法定金利は21%にもなる。
ドイツは政府支出は(憲法改正等で)増やせるものの、独自通貨でないため法定金利は操作できません。これに引きずられてユーロの金利が上昇するかどうかは不透明です。さて、目を覚ましたかつての大陸軍国はどうなるのでしょうか?