Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

経営責任と補償

 福島第一原子力発電所の事故について、東京電力の旧経営陣に対する株主代表訴訟の一審は、5人の被告中4人に有罪判決を下した。総額22兆円の補償を求めた訴訟だったが、判決は13兆円だった。これは被告が株主に払えとか、被災者に払えと言う命令ではなく、東京電力に支払えというもの。

 

東電旧経営陣に13兆円賠償命令…原発事故・株主代表訴訟、地裁「津波対策怠る」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 

 確かに厚遇されている電力会社の経営者だが、1人あたり3兆円以上の支払いなど出来るとは思えない。もちろん控訴はするだろうが、仮にこの金額で落ち着いた場合どうなるのだろう。昨今流行りの「自己破産」でチャラなのだろうか?

 

    

 

 株主代表訴訟が日本よりはるかに多い米国では、企業経営者が個人で保険に入り、いざという時に備えている。例えば、最近増えているサイバー被害に対しての保険については、米国と日本の普及度が全く違う。日本が伸び悩んでいるというより、米国経営者が個人として対処しようとしていると考える方が正しい。

 

サイバー保険の内外事情(前編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 日本の「会社役員賠償責任保険」はどうなっているのか、識者に聞くと「結構普及しているよ。確か5年ほど前に経産省が調査したら、上場企業の90%以上が利用していると分かった」とのこと。この4人の被告が、どのくらいの規模の賠償を可能にする保険に入っていたかは不明だが、兆のオーダーの支払いだと保険会社も困ってしまうだろう。

 

 この判決は、いくつかの影響を日本企業にもたらすと思う。

 

・経営者が危機感を持ち、真摯に経営に(リスク管理に)向き合う

・サイバー保険を含めて、いざという時の備え(上限額等)を拡充する

・だから保険会社のビジネスが拡大し、よりリスクに長けた外資系も参入する

 

 ただ、本当にリスク管理のできる経営者は、特に日本には少ない。保険だけではなく、経営者そのものを外国から獲ってくるケースが増えるかもしれない。日本人社員は経営者になることを怖れ、経営者不足で企業が統廃合されることになる・・・かもしれない。

 

 経済安全保障推進法が成立し、重要インフラ企業やそのサプライチェーンに繋がる企業への圧力は増します。その重圧も含めて、経営者とそのサポート役にはやってもらうことが増えそうですね。