Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Atlantic Councilの機会とリスク(後編)

 チャンスには期待したいのだが、同時にAtlantic Councilの言う十大リスクの方も見ておこう。大きくは「ユーラシア・グループ」のものと違いはなく、

 

1)「COVID-19」危機

2)バイデン政権の縛り

3)グローバル金融危機

4)西側諸国の経済回復遅延

5)北朝鮮の策動

6)米イランの対立

7)台湾巡る米中対立

8)最悪の食糧危機

9)ミドルクラス拡大の終焉

10)トルコ問題

 

 が挙げられている。目新しいところでは#8、「COVID-19」の陰に隠れてはいるが大規模なバッタの跳梁もあって、世界的な食糧不足は明らかである。加えて世界を巡る輸送も、食糧だけではないが滞っている。飢餓と言うのは絶対的な食糧不足よりは、流通経路の停滞が原因で起きる方が多い。その意味でも重要な指摘だと思う。パンデミックの死者よりも、餓死者が多くなる可能性もある。

 

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 #9も独自の視点。日本の中だけで見ると格差拡大に見えるのだが、世界中では過去30年で最貧困層からミドルクラスに抜け出せた人が少なくない。その意味で格差は縮小していたのだが、「COVID-19」の影響もありこのトレンドに歯止めがかかるという。世銀では、今年中に最大1億5,000万人が最貧困層に落ちると予測している。

 

 じゃあ富裕層は無事なのかと言うと、そうとも言い切れない。すでに「Bit Coin」の暴落が話題になっているが、各国の財政支出で経済を持たせている現状は、そうそう続けられるものではない。金融不安から金融危機をもたらす可能性は少なくない。特に途上国への支援は7兆ドルを超えていて、これは決まり上は今年中に償還することになっている。上記食糧危機なども含めて、途上国がそれに耐えられる公算はなく先進国の財政がどこまで辛抱できるかが試されるだろう。

 

 紛争リスクとして#5~7が挙げられているが、期せずしての偶発的衝突はあり得るものの、いずれも正規の戦争になるとは僕は思っていない。特に米中は、これだけ経済的な結びつきのある大国同士の衝突というのは、理性的には考えられない。ただサイバー空間での小競り合いは、頻度や深刻度を増すだろう。

 

 さてチャンスとリスクは分かったところで、僕らは何をしますかね?大きな戦争にはならないように、しかしデータ覇権のような場面では妥協せず大国とも渡り合いたいですね。