先日「ユーラシア・グループ」の2021年世界の十大リスクを紹介したが、いくつかのシンクタンクやコンサルファームで同様の発表をしていると教えてもらった。面白かったのは「Atlantic Council」の発表で、リスクだけでなくチャンスの方も10個提示してくれている。まずはその十大チャンスを御紹介したい。
1)WTOの再生
2)多国間主義の復活
3)米露の関係修復
5)「COVID-19」ワクチンの開発
6)デジタルガバナンスの新しい枠組み
7)AIが競争のほか協力関係を産み出す
8)マンハッタンプロジェクト(蓄電池)の開始
9)米欧の技術協力(対中国)
10)米国主導のCPTPP
こうしてみると#1~3や9、10は、トランプ政権の「America First」の弊害を是正する項目に見える。特にWTOについては、最高裁判所判事に当たる上級委員が今や一人しかおらず非機能状態にある。バイデン政権は国際協調・多国間主義に戻り、これらを復活していってくれると期待されている。
#5~8には、テクノロジーに関することが並んだ。ワクチンの重要性は言うまでもないが、AIに関しては特に欧州で「効用よりリスク」を大きく取り上げる傾向があるのは問題だと思っている。まあゴールドマン・サックスのトレーダーがAI導入で600人から2人に減ったことなど見れば、雇用の脅威と見られても仕方ない面はあるが。電池の開発についても、石油業界などからが厳しい見方もあろう。しかし世界の潮流のひとつ「Resilience」のためには避けて通れないことだ。
また#6については、本来サイバー空間は世界で一つなのに、今は米欧中の3極に分かれている。習大人のアリババ叩きなど見ていると中国を組み込むのは難しいとしても、米欧間の関係修復には期待したい。これは#9や10にも関係してくることだ。
#4のアラブ諸国とイスラエルの関係修復は、20世紀からの大きな宿題。まだイランの核開発問題は残るが、カタールとサウジの関係も明るい兆しがあるし、中東に平和が来ることは歓迎したい。
ちょっと気になったのは全編を通じて日本の事がほとんど取り上げられていないこと。リスクの方にも出てこないからいいようなものの、ちょっと寂しい。
<続く>