Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

欧州委「AI白書」を巡る議論(3/終)

 「AI白書」の前段に、AIはデータ経済の最も重要な適用事例との記述があり、AIの活用発展にデータが重要なことには理解を示している。彼らも「DATA Driven Economy」が来ることには気付いているのだ。ただ、じゃあAIって何というと、その次の段落には、

 

 単純に言えば、AIはデータ・アルゴリズム・コンピュータの能力を結合する技術の集合体である。

 

 と記載されている。データの重要性を強調するための一節にあるせいか、恐ろしく幅広な解釈である。危険なのは、他に適当な定義論が煮詰まっていないからだが、これをまずは「定義」としてしまおうという暴論が一部にあること。これが定義だとすると、iPhoneはもちろんのことデジタル時計や旧式のデジタルカメラ、カーナビでさえAIになってしまう。

 

 20年前のカーナビを見ながら、パリ近郊をドライブしていた。しかし地図が最新になっておらず工事中の穴に落ちて助手席の人が事故死した。そんなケースもかんがえられるから、交通分野の生死に係るAIなので、20年前にこのカーナビを売った企業は制裁される・・・などということにならないように祈りたい。

 

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 「AI白書」がAIの活用拡大を中心に据えた記述をするのなら、僕も目くじらは立てないが、どうも規制するために種々記述している部分が多いことから、どうしても「定義」は厳密にしなくてはいけないと思う。僕は、「こんな幅広の説明は意味がない。まして定義とするなら弊害は著しい。デジタルではなく進化論の世界に当てはめるなら、哺乳類は全部人類だというに等しい。だから食用豚にも人権が必要という議論になるぞ。僕はドイツのハム・ソーセージは大好きだが、それが食べられなくなるのは残念だ」とドイツ人にも聞こえるように言ってやろうと思ったくらいだ。

 

 IBMによると、一番外殻に旧来型のエキスパートシステムを含むデータでアルゴリズムやルールを書き換えるシステムがあり、その中に「Machine Learning」ができるシステム、さらにその中に「Deep Learning」システムを置く三層構造を示している。僕がいま荒っぽく定義するなら、

 

 データを自ら収集し、それに基づいてアルゴリズムやルールベースまで自動的に書き換えるシステム

 

 くらいにするでしょうね。この議論、本気で取り組まないと、AIの健全な発展や社会適用に水を差しかねませんよ。