21世紀になって、特に自民党政権では省庁の縦割りを打破し、政策課題について省庁横断の取組ができるような「司令塔機能」が設けられるようになった。僕が最初にデジタル政策という分野に首を突っ込むことになったのは、「IT戦略本部:現IT総合戦略本部」での議論に関してだった。今も「こども庁」や「デジタル庁」の設置については、この考えが基本になっている。
科学技術開発は、国力の源泉であり、将来への投資であることは自明である。しかしこの分野にも省庁縦割りの弊害はあった。デジタル分野に限っても、半導体やコンピュータ関連は経産省が、通信に関しては総務省が主導している。R&Dとして重複したり連携できていなかったりする弊害が目立ち、2013年に提案されたのが「戦略的イノベーション創造プログラム:Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program」通称SIPである。
国家として重要な研究課題について1件1人の研究責任者(Program Director:PD)を置き、内閣府で予算を付けて単年度ではなく5年ほどかけて研究開発を行うというもの。政府の総合科学技術・イノベーション委員会の民間委員が、研究の方向性や進捗などをマネージするらしい。
この考え方そのものは悪くない。昨今の科学技術は分野横断的なものが主力であり、大きな研究課題は単年度(予算)で解決できるようなものは少ないからだ。とはいえ省庁間の綱引きになると容易に決着しないので、まとめて内閣府に司令塔を置くのは必然ともいえよう。現時点で第二期(2018~2022年)の研究課題が12テーマ進行中である。
1)ビッグデータ・AI を活用したサイバー空間基盤技術
2)フィジカル空間デジタルデータ処理基盤
3)IoT 社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ
4)自動運転(システムとサービスの拡張)
5)統合型材料開発システムによるマテリアル革命
6)光・量子を活用したSociety 5.0 実現化技術
7)スマートバイオ産業・農業基盤技術
8)IoE 社会のエネルギーシステム
9)国家レジリエンス(防災・減災)の強化
10)AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム
11)スマート物流サービス
12)革新的深海資源調査技術
今回、#3の内容について、聞く機会があったので紹介してみたい。
<続く>