Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

シックスアイズへの道(後編)

 「ファイブアイズ」の話とは別に、最近安全保障関連のキーワードが景気よく飛び交っている。曰く、敵基地攻撃能力・先制攻撃論・果ては核武装論まで。この手の話は、僕も軍事ヲタクだったので若いころはよくやったのだが、空理空論の域を出ないことが多い。現に「敵基地攻撃」に関しては、元防衛大臣・元自衛隊隊司令などの有識者が「軽々と議論すべきでない」とクギを指している。

 

 空理空論と見ているからだろうが、仮想敵国からはこれを警戒はするものの深い分析をするような報道はない。それに比べて「ファイブアイズ」については、人民網日本語版で、

 

・日本はCPTPPの中心国、加盟国全部のGDPは世界の13%にあたる。

・6番目の目となった日本は、この地域での情報力を拡大させ発言力も強くなる。

・これが東アジア地区の安全保障に大きな影響を与える。

 

 とする論評を載せて高い警戒度を示した。この種の話は、自分が騒いでいるだけではだめで、相手が論評し始めた場合に初めて意味が出てくる。

 

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 ただ日本が「ファイブアイズ」の仲間入りをするには、多くのハードルがある。そもそも5ヵ国に限定されているのは、最高レベルの機密情報が守れる国と求められているのが5ヵ国だからだ。諜報/防諜戦はこのところ激しさを増していて、

 

・中国に情報を流したとして元CIA局員が逮捕

・ロシアに情報を流したとして元グリーンベレー隊員が逮捕

 

 されている。日本は諜報/防諜戦の能力で、その資格があるのだろうか?

 

 純粋軍事情報については、NATOの一員なので自衛隊や関連機関の能力はあると考えられる。しかし安全保障関連情報は民間にも一杯ある。いや今や民間の入る余地のない純粋軍事の世界の方が、ずっと小さい。つまりシックスアイズ入りにあたり、日本の産業界は「秘密を守れるか?」と問われる。

 

 以前日米の産業界で、サイバーセキュリティ情報の共有の議論をしたことがある。ある一線以上の情報は日本企業には渡せない、それは日本企業が「セキュリティクリアランス」をもっていないからだと言われた。米国には民間人でもこのクリアランス資格を持ち、機密情報を見ることができる人がいる。当然機密保持の義務も負うのだが、日本では極めて特殊な業務従事者以外はそういう資格の設定がない。

 

 僕自身は日本のシックスアイズ入りは必要なことを思っていますが、そのためにも早々に民間のセキュリティクリアランス制度の検討が必要でしょう。