以上見てきたように「セキュリティ・クリアランス制度」は、国家安全保障に関わる機密情報に「人」がアクセスすることを許可するもの。いかに高位で優秀な人物であっても職務上必要でなければ、与えられることはない資格である。また職務等の必要性に加えて、その人物が「機密を守れるか」の誠実性や信頼性についても審査が行われる。それではその審査内容はどんなものになるのだろうか。
1)Stability(安定性)
2)Trustworthiness(主として対人関係の誠実・信頼度)
3)Reliabirity(体力・耐久力も含めた確実性)
4)Discretion(分別)
5)Character(性格)
6)Honesty(正直)
7)Judgment(判断力)
8)Unquestionable loyality to U.S.(忠誠心)
耐久力って何かというと、どうも拷問などに耐える力のことを言っているようだ。加えて忠誠心に「疑う余地のない」という形容詞がついていたのには、ある種の感動を覚えた。まるで海兵隊の「センパー・ファイ」やね。
このような制度があって、Intelligence情報を得てもこれを守ることができる人材と認定されない限り、重要情報は渡せないというのも理解はできる。長年日米同盟関係が続いていて、米ソ冷戦のころには今より高いレベルの危機もあっただろうに、どうして日本にはこういう制度が無かったのだろうか。米国側に聞くと「何度か導入を呼びかけたが、文化的に難しい」と断られたとの返事。どんな「文化」かというと、恐らくは、
・英米では「スパイは紳士のお仕事」
・日本では「スパイは卑しい仕事」
という意識の差ではなかろうか。
HUMINT工作に学ぶ - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
もしこの話が事実なら、セキュリティ・クリアランス制度の導入に向けては、国内問題が大きいことになる。英米が「情報をくれない」と嘆くだけではなく、国内で情報の重要性を説き、独自情報収集能力を磨くことから始めないといけないわけだ。
「デジタル庁」にも関わりのある有識者が、この制度の内容を政府に伝えて導入検討を依頼している。さて、政府の動きはどうなるでしょうかね。期待していますよ。