Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

僕の「ジョブ型雇用論」(5/終)

 このような人事制度無視の過激な提案をしたのは、プロジェクトの成功率を上げる、プロマネを育てる以上に、誰にも話していない理由があった。ひとつには、人事を個人に取り戻すこと。上司やその上司が自分の行き先を決めてくれ、与えられた場所で「一所懸命」という生き方に満足できなかったから。僕のそういう行動様式は周りの人も気づいていて、入社後2年くらいの単位で転勤を繰り返す経験のせいだと思っている。それは半分は正しいが、そもそも入社時「博士課程に行ったつもりで大企業を3年観察する」と思っていたのだから確信犯である。

 

 もうひとつは、事業所内のプロジェクトを見ていて、本来は技術力などを磨いて次世代を担わなければいけない所員が雑事に紛れて自分の能力を高められない、また高めようという気力も失いつつあると思ったから。その技量の不足を補っていたのが、エンジニアリングの人材派遣企業だった。中部地区中心に展開する一部上場の大会社で、プロジェクトの要員が整わないとプロマネがその会社に電話して技術者を追加してもらう。

 

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 その会社の技術者は、運が良ければ多くのプロジェクト現場を踏んで成長していく。本来所員にやらせて育成すべき努力を、そのプロマネが怠っていたのだ。今メディアでは派遣労働者の悲劇ばかりを取り上げるが、派遣労働で自己研鑽して次のステップに進んだ人も少なくないはず。僕が知る時代には、「研鑽」と言う意味では所員の方が割を食っていたように思う。それでも「終身雇用」なので生涯会社が面倒見てくれると思えば、割を食ったとは考えないかもしれないが。

 

 しばらくして、会社全体で「ジョブ型雇用」の入り口のような制度が始まった。何かと言うと「KPI:Key Performance Indicator」の登録である。半年もしくは1年の業績数値目標を設定し、後に正否を問うのだ。KPIはいい方法だが、その設定の仕方や評価が難しいケースも多い。現場は結構混乱した。僕自身は課長研修でのとんがった提案が事業所長クラスに蹴り飛ばされなかったのは、すでにKPI導入の議論が全社的に始まっていたからだと後に思った。

 

 いずれにせよ「仕事が出来なければクビになる」などと不安をあおるメディア調ではなく、人事を個人に取り戻すためのものだと「ジョブ型雇用」を考えていただきたいものです。