Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

僕の「ジョブ型雇用論」(4)

 僕の提案したプロジェクト優先の雇用方式は、優れたプロマネにとってはプロジェクト要員を集めやすい利点がある。技術開発課題に対してアナログ分野のベテラン技術者が必要だが、すでに別プロジェクトに従事している場合「今の2割増し給料払う」といって引き抜きもできるからだ。その2割分の人件費ポイントをいかにひねり出すかは、プロマネの腕次第。優れたプロマネのプロジェクト成功率も高くなる。

 

 これに対して、半数の課長研修参加者は沈黙。残りが、後にそこの事業所長になる僕より2歳ほど上の課長を中心に反論してきた。

 

◆仕事がない時、50%の給料では暮らせない。

 福利関係を切るわけではない。ちょっと休職しての充電期間と考えてもらえばいい。次のプロジェクトでより良い報酬を得るための「一休み」だ。

 

◆キーマンを引き抜かれたプロジェクトが潰れたらどうする?

 引き抜きがあっても、そのリカバリーが出来ないようではプロマネ失格。そんなマネージャを選んだ幹部の責任だろう。

 

◆組織への帰属意識が崩壊するのでは?

 今は従業員に過度の「愛社精神」を期待している。その結果双方に甘えが生じて「もたれ合い構造」になっている。帰属意識そのものが邪魔である。

 

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 今にして思えば「青二才風」の議論だったが、後に事業所長になる彼は「そこまでしないといけない理由が分からない」とつぶやいて、議論を終えた。そして「全員が一致した意見ではないが、こういう議論があった」として報告することは認めてくれた。

 

 もちろん説明は僕がして、事業所長以下の反応はさまざまだった。意図は分かるという人もいたし、今の人事制度では不可能だという現実的なコメントもあった。ただあとで聞くと、事業所長がほぼ同時期にあった部長研修の報告に満足せず、「課長級でもこんなとんがった提案をしてくる。お前らももっと危機感を持て」と発破をかけたらしい。

 

 もちろん人事制度の壁は厚く給与にまで手を付けることは出来なかったが、その後新しいプロジェクトへの人員の融通は以前より改善した。僕自身は、その事業所が浮沈をかけるドイツの会社との合弁開発に回されることになる。ちゃんとプロマネになってから言えということだろう。

 

<続く>