Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ジョブ型雇用時代のおカネの制度

 本当かどうかは知らないが、江戸時代の武士は、お家大事、主君の命は絶対というメンバーシップ型雇用の典型だと聞かされていた。僕の両親も、大企業に拠って長く務めるのがいいという考え方だった。

 

 親父は地場の電灯会社に就職したが、大合併が起きて、気づいたら中部電力という大企業の従業員になっていた。50歳を超えて先輩たちから「今、会社を辞めたら損だ。毎年の給料分くらい(退職金や年金で返ってくる)見えない貯金を殖やしているのだから」と言われたという。

 

 幹部などではなくエッセンシャル・ワーカーだったのだが、他の職業の人よりは退職金も良く、年金も十分だ。近所に住んでいた僕の従兄弟(小規模企業勤務)が、「叔父さんの年金、俺の給料より多い」と驚いたという。きちんと算出できないまでも「寄らば大樹の陰」というわけで、大企業に入ればいいことがあると思われた。

 

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 ただその制度も、僕が社会人になるころにはほころびが見えていた。「団塊の世代」の人達が管理職になるかならぬかの世代になり、その中での格差も見えて来ていたし、45歳をすぎると関連会社等へ転籍というケースも多かった。「実質上終身雇用はもうない」と先輩たちが嘆いていたのを覚えている。

 

 そこで出てきたのがジョブ型雇用論。米国企業に倣ったとの説明があり、企画部門など特定の部署で試行が始まった。今「COVID-19」禍もあり、団塊ジュニア世代の定年やバブル入社組のポスト争いが目に見えてきて、多くの企業がジョブ型雇用に興味を示している。

 

ジョブ型に安住はない。8割賛成の一方で見えていない“副反応”とは? | Business Insider Japan

 

 ただメディアも含めて、この制度に疑問符を付ける人も多い。この記事などその典型で、もともとビジネスの戦場に「安住」などあるはずがないのに、この制度が雇用者の立場を壊すと言いたげだ。

 

 いろいろな記事を見て、欠けているなと思うのが「おカネ」の議論。それも退職金や年金、さらに所得税の話。長く勤めれば退職金が割り増しになる、年金も(年数以上に)増えるというのでは、人は新天地に流動しない。加えて報酬が増えても累進課税がきつければ、手取りはさほど増えない。

 

 退職金を廃止しその分は給与に廻す、いわば時価会計。退職金の非課税分は、少なくとも累進税率緩和でカバー。こういう制度設計を、新しい内閣ではお願いしたいですね。