Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

僕の「ジョブ型雇用論」(3)

 なぜこの事業所で「ジョブ型雇用」を試すことができるかと思ったかというと、その事業環境に特徴があったから。大規模事業所は、大型コンピュータやストレージ、それを(標準的に)動かすソフトウェアなどを製造販売している。基本的に標準品を開発・製造するビジネスだ。

 

 一方この事業所は、お客様の細かな要求に対応して製品をカスタマイズすることが多い。例えば普通の銀行ATMは紙幣の補充などを、利用者に見えない後面を開けて行う。しかし郵便局は店舗レイアウトの関係だろう、後面に作業スペースが取れない店舗があり利用者が立つ前面を開けてできるようにしてくれという。これは紙幣を数え収納しあるいは払い出すメカ機構の構造を大きく変えることになる。

 

 郵便局は極めて大口のお客様だが、そうでない少量生産でもカスタマイズは発生するし、金融・交通・その他多くの業種で求められる端末機器の能力はまるきり異なる。さらにコンピュータに詳しくない一般利用者が直接操作するし、紙から情報を読み取ったり、特殊な媒体(例:通帳)を扱うことになる。大規模事業者がデジタルの世界を中心に製品開発・製造・保守をすればいいのに比べ、デジタルとアナログの境目という特殊な技術がこの事業所には求められるのだ。

 

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 電気・デジタル・メカ・アナログといった技術者が必要で、多品種少量生産のため多数のプロジェクトが定常的に走っている。この中で製品とそれを持っている組織(部・課)に、所員が縛り付けられているのが現状だった。所員は部長・課長の所有物であり、開発要員が開発の仕事がない時でも「自分の製品の改良」をしていることもあった。それも、決して急がない改良なこともある。

 

 課長職になった最初の課長研修で、構造改革として僕が挙げたのは、

 

プロマネと主要な開発者を登録して、通常の人事体制から外す。

・業務からも外し、仕事がないうちは給与の50%を人事部から支給する。

・プロジェクト発生時、プロマネたちは、開発費・人件費・納期等を入札する。

・人件費の中には自分の給与(基本給×何%)と要員の給与を含める。

・選ばれたプロマネは入札時のレート(例:基本給の120%)を開発期間は受け取る。

・開発要員は入札したポイント(例:10人×100%)でリクルートする。

・この時8人×125%でもよし、5人が120%残り5人は80%で契約してもいい。

 

 という方式。

 

<続く>