Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

セブン銀行「新型ATM」の行方

 日本人の現金指向はまだ根強く、政府は消費税UPの緩和策の一環に「キャッシュレス決済時のポイント還元」まで持ち出して、キャッシュレス化を推進しようとしている。背景には「お札」というものの維持管理コストが大きくなりつつあることがあると思う。ただ印刷・配布すればいいというものではなく、偽造対策・印刷原盤や用紙の管理、紙幣自体のライフサイクル管理(ちゃんと廃棄したことの確認)まで、やるべきことは多いのだ。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/302869

 

 そんな中、セブン銀行が新型ATMを導入するという記事があった。顔認証機能や本人確認用書類のスキャナ機能までついている、「ハイテクATM」である。コンビニATMはこのところ台数を伸ばしていて、セブン銀行は約25,000台、ローソンでも約13,000台を運用している。セブンの台数は、日本最大の銀行「ゆうちょ銀行」のそれに等しい。

 

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 20余年前僕がこの市場をWatchしていたころ、日本全国のATM台数は約15万台だった。当時その多くを占めていた銀行等では、10万台程度に減らしてきているのだが、コンビニATMや独立系のものが増えて、おおむね18万台くらいの規模になっていると推定される。

 

 ただこの拡大が今後も続くとは、関係者なら誰も思っていない。政府・日銀が紙幣の管理にコストがかかるように、金融機関も大きなコスト負担を負っているからだ。コンビニは来店客増のための設置をしていると思うのだが、それにしても利用料収入でコストをある程度賄えないと「負債」になってしまう。

 

 上記の記事に、2014年に1日あたりの利用件数が100件程度だったものが、2019年には90件を割るとの予想が出ている。20余年前とは多少手数料や設置コストなどが変わっているだろうが、当時は100件/日を割るATMは「負債」なので廃棄対象とみる銀行が多かった。大阪梅田駅前の某都銀のATMは400件/日、こういう優等生がいたからビジネスモデルが廻っていたのだ。

 

 コンビニATMも平均で100件/日を割るようになると、不採算店舗からは撤去するかもっと根本的なビジネスモデルチェンジを迫られるだろう。決して「顔認証で手軽になりました」程度の機能UPでは、対応できないはずだ。日本に根付いたATM文化も、そろそろ曲がり角に来ているようですね。