Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

時給1,500円の代替手段

 今年の最低賃金交渉(最低労働賃金審議会)は、非常にモメた。困窮者が増えていると大幅UPを要求する労働者側と、「COVID-19」の不況下では現状維持が精一杯とする事業者側の主張のGAPが大き過ぎたからだ。昨年は微増(0.1%)に留まっていたのから一転、3%という大幅UPを労働者が勝ち取って、日本商工会の三村会頭らは「到底受け入れがたい」と反発した。

 

最低賃金3%UPに決まったわけ - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 でも紹介したように、経済学者の中には時給1,500円は必要だとの意見もある。「安い国日本」になっているとはいえ、韓国でも時給は900円弱に達し、ここは全国一律だからこれに届かない県は日本にもたくさんあることになる。また人手不足の米国では、時給15ドルでは従業員が集まらない。まあ米国の場合は日本の「特別定額給付金」に相当するものが手厚くて、それを使い果たすまでは働かない人が多いせいともいうが。

 

 最低時給議論の中で僕が何度か指摘しているのは、競争相手は人間(例:海外からの労働者)だけではないということ。機械の方が安ければ、経営者はそちらを採用し、結局失業者が増えることになる。

 

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 昔の話だが、銀行のテラー1人よりATM1台(当時1,000万円くらい)の方が安いと、金融機関はATMを導入し、ピーク時日本には20万台ほどのATMが稼働していた。現代のそういう例はないかなと探していたところ、こんな記事があった。

 

成田空港が「自律走行する警備ロボット」を月額30万円で導入した本当の理由 ミッションは「世界を変えないこと」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

 警備業界も人手不足だし、ある意味危険な仕事でもある。深夜勤務も多いし、体力も必要だ。そんな職場に「自律走行ロボット」がやってきて、月額レンタル30万円。これは時給1,000円で200時間働いてもらう方が安いが、福利厚生など諸費用を加えると近い金額になる。さらに上記のように時給が1,500円なら、だんぜんこちらの方が安い。

 

 テーブルの間をすりぬけながら配膳するロボットを、見たこともあります。どうやらより広い分野で人間を代替するロボットが、コストの面でも追いついてきたようです。最低労働賃金審議会さん、これでも来年も賃金上げを答申しますか?