Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

脱紙処理、25年前の記憶(前編)

 金融機関、中でも銀行業界への逆風は激しさを増している。長引く低金利の上に優良な「借り手」が見つからない。今は「COVID-19」経済対策の政府マネーが流れ込んでいるからいいようなものの、それが切れれば「借り手」企業の倒産・廃業が急増しかねない。

 

 一方で日本には銀行の種類も数も多すぎる。旧都銀こそ再編で数が減ったものの、地銀・信金レベルでは再編は緒に就いたばかり。ゆうちょ銀行という巨大なライバルもいる。デジタル革命で無くなる職業の予測では、その半分が金融業だったという例もある。だから、銀行そのものも銀行員も、ある意味瀬戸際にいるのだ。

 

 そんな中、メガバンクはいろいろな動きをしている。新規口座から管理手数料を取るようにしたり、通帳を有料にしたりで収入増を図り、ATMを共用化するなどで減らしてコストを削減する。産業界としては当たり前のことを始めたと言ってもいい。

 

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 30年ほど前「金融Big-Bang」の勉強をした僕は、その後日本の銀行がその本分である「融資と回収」と関係の薄い業務に忙殺されていることを知った。その代表的なものが「紙処理」、お札や小切手などを扱うのはまあ仕方がないとしても、額面の安い株主優待券やビール券なども銀行に持ち込まれる。

 

 こういうバックヤード作業で負荷の多いのは何かと調べると、税金の収納帳票だと分かった。当時は約3,000の自治体があり、それらが独自の条例に基づき独自のフォーマットの帳票で収納していた。バリエーションが多すぎてベテラン職員の人手に頼っていたのが実態。

 

 まず帳票を統一できないものかと調べると、電子自治体の統一化と同じように直ぐには不可能と分かった。次には帳票にバーコードなど印刷してもらえないか考えた。流通業界がPOS導入で商品にバーコードを打たせた先例がある。しかしこれも自治体側は冷たい反応。仕方がないので、各種帳票をパターン認識して識別し、処理を自動化できないかやってみた。

 

 ある都銀がとても積極的で、受注がちらついた僕らは、3,000自治体の帳票集めやパターン認識技術の強化に奔走した。しかし調べれば調べるほど、税金の種類も帳票のバリエーション(通常・督促・催告等々)も多く、AIも無かった時代で開発は頓挫した。

 

<続く>