NATOが「トランプの王様」にひれ伏して見せ、防衛費のGDP比5%を表面上約束したのは、それなりにインパクトがあった。一番困っているのはスペインやイタリア(いずれも防衛費1%強)ではなく、6.3%から削減を考え始めているロシア(*1)かもしれない。
わがままな王様は、多分日本や韓国にも同じことを求めてくるだろう。日本の防衛費は現状でGDP比1.5%ほど、当面2%目指して増やしていく予定だ。あくまで直観だが、戦える自衛隊にするには2%程度は必要だろう。これまで正面装備ばかりに予算をあて、兵站や補給にカネが回っていなかった。その象徴的なのが「部品の共食い」である。
例えば新鋭機が12機揃っていても、半分ほどは飛べない状態。より状態のいい機体を優先し、不足する部品は状態の悪い機体から持ってきてしまうのだ。旧軍でもWWⅡ末期になればなるほど、その傾向が強まった。防衛費が1%枠の呪縛から外れた時、新鋭機を増やすのではなく隊員の待遇や兵站・補給にカネを回してほしいと思っていたが、この問題が意外な機関の尽力で報道されるようになった。
国産哨戒機、エンジン不調で一定数飛べず 国費1兆7千億円 検査院:朝日新聞
この記事だけでは、P1哨戒機が額面通りの性能を発揮できていない理由は分からない。可能性としては、
・予算が回らず予備エンジンが不足
・エンジンそのものの能力(耐久性?)不足
・整備の体制や基地能力の不足
などが考えられる。いずれにせよ、これでは戦えないと会計検査院が教えてくれたわけだ。朝日新聞の論調としては、いかにも「無駄な予算消化」を叩いているように見えるが、叩いてもらって戦えるようになるなら有難い話だ。
5%は難しいにしても、世界の趨勢は「軍拡」。これまでの「1%枠だからできません」との言い訳はもう通用しません。効率よく戦えるように防衛費の配分を決めてくださいね。市民の税金ですから。会計検査院もムダをあげつらうのではなく、どうすればムダなく戦えるようにするかを考えてくださいね。