Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

個人情報保護法改正案(後編)

 最後の項目については、GAFAをはじめとする米国企業などについても、この法律を適用するぞということ。越境移転については欧米などの先進国というよりは、個人情報保護法制の未熟な第三国に移転する際には、その国の企業に十分な対処能力があるか確認しろよということらしい。

 

 さて今回の目玉は「仮名加工情報」の新設。例えば同じ日に僕が7/11でパンを買って、セブン銀行で預金したというのは、匿名化してしまうと別事象になる。しかしセブンHDの中でパンを買って預金したのは同一人物とわかったら、セブンHD全体として僕に対するマーケティングに使うことができる。つまり組織内部では匿名ではなく仮名にして同一人物であることを認識できるようにすることがメリットになる。

 

    f:id:nicky-akira:20200319180731j:plain

 

 それはいいのだが、これに伴い法的概念として「個人関連情報」というものが出てきた。僕が関わったデータは全部「個人関連情報」になり、その中で「匿名加工情報」やそもそも個人データと言えないようなもの(例:機械データ)は個人情報の枠から外れる。枠内には機微情報を含む個人情報がありそこに今回設定の「仮名加工情報」が入るという構造になる。危惧するのは「個人関連情報」は無限に広がるので、その中から「これも個人情報だよね」とあとから指摘されること。

 

 委員会関係者からは、「データについての良しあしというより、どういう目的で使うのかそのデータをどういう方法で集めるのかを考えて良しあしを決めるべき」との言葉。僕は冒頭紹介した経団連17事例を引用して、どのデータを誰がどのように使って社会を良くするかの具体的なモデルを俎上において議論したいと応えた。委員会だけでなく政府の各部署、経団連だけでなくいろいろな団体(ACCJJEITAも新経連もIT連も・・・)が加わって、社会的に容認されるモデルをひとつひとつ積み上げていくべきだろう。

 

 ちなみに施行時期はいつになるかと聞くと、「今の通常国会で順当に可決成立するとして、規定では法案成立から2年以内の施行となっているから、常識的には2021年度中となろう」との答えだった。さもありなんとは思ったのだが、改正案の検討は1年ほど前から始まっている。施行まで3年以上かかるというのでは、デジタル社会の変遷についていけないのではないかと危惧した。まあそれはこの法案に限らず、デジタル法体系全般に言えることですがね。