Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

中国のデジタル基本3法施行

 中国のTPP加盟申請には驚かされた。以前から「Great Fire Wall」のある国で、データの国境を越えた自由な流通ができない。TPP電子商取引章に、データ関連3原則、

 

・国境を越えるデータ流通の確保

・サーバーローカライゼーションの禁止

ソースコード強制開示の禁止

 

 が入っているのを、中国政府が認めるとは思えなかったからだ。共産党政権を揶揄するようなデータ(例えば大紀元のような)が入ってくることも、国内のデータが他の国に流出することも、100万人の人民解放軍兵士がインターネットを監視して封鎖しているとも言われていた。

 

 現在ではインターネットそのもののデカップリングが進み、事実上「もう一つのインターネット」が中国にはある。加えて今月には「デジタル基本3法」の2番目「データセキュリティ法」が施行され、11月には最後の「新個人情報保護法」が施行される。中国の法制度に詳しい専門家から聞いたところでは、2017年にネットワークの保護・サイバー空間での主権・国家安全と公共利益の保護を謳った「サイバーセキュリティ法」が施行されたのが始まり。

 

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 そして今年から「第14次五ヵ年計画」が始まると早々に、日本の憲法に相当する「中国民法典」にプライバシーと個人情報保護が書き加えられた。日本と違って、憲法は改訂が可能らしい。同時に「中国国防法」が改訂され、サイバー空間が軍事行動の対象エリアであることが明記された。中国が主権をもつサイバー空間に攻撃がなされれば、軍事的な攻撃とみなすということ。

 

 そして仕上げが、上記2法の施行というわけ。特に「データセキュリティ法」はデジタルではない紙ベースの情報も対象になっていて、海外への持ち出しを厳しく制限している。

 

・重要データ流出で事態が深刻だと、100万~1,000万元の罰金、事業停止(責任者にも罰金)

・国家主権、安全、発展利益に危害が及ぶと、200万~1,000万元の罰金、事業停止(責任者は刑事責任)

 

 ということになる。ついにデータ流出で「お縄になる」ことが明記されたわけだ。「いや重要データだけのことだよ」と言われるかもしれないが、「法律は政府が市民や企業を統制するための道具」(中国事情に詳しい人)である国。こんなものくらいと思ったデータ持ち出しで「刑事罰」となりかねない。

 

 そんな状況で「国境を越えるデータの確保」の協定に入るつもりですか、習大人?