「Digital Single Market」政策を数年前から進めている欧州連合には、そういう意味で学ぶところが大きい。そろそろ成果も出るころだと思ったから、昨年の日欧ICTワークショップでは、欧州企業には苦労した点や利点を教えてほしいと日本企業側はお願いしていた。するとこれに絡んで、とても興味深い記事が載った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54677290R20C20A1FF1000/
シンガポール・ニュージーランド・チリの三ヵ国が、「デジタル経済パートナーシップ協定:DEPA」の実質合意に至ったという。内容は、
・貿易書類の電子化
・ビッグデータの移管
・AIの統治、管理
・個人情報保護
・デジタルID
・FinTech
・規制の適用除外制度
という。国境を越えた物理的なデータアクセスを可能にしたTPPを越えて、データの活用が可能な基盤を造るとともに乱用防止をうたっているいるものと思われる。個人情報保護は昨今世界のスタンダードに近くなってきたGDPR様のもの、AI管理は個人情報の乱用を制限するものだろうと思う。
なぜこの記事に注目したかというと、データを活用してイノベーションを興すには4つの条件が必要だと思っているからだ。
(1)データに国境を越えてアクセスできること
(2)フォーマットやIDが標準化されデータがすぐに使えること
(3)データ活用で「儲かる」ビジネスモデルがあること
(4)社会的コンセンサスが得られ、炎上しないこと
(1)はTPPで担保されている。このDEPAは(2)(4)を実現するルールのように思える。であればTPP+DEPAを守れば、企業は(3)の条件をひたすら追い求めればいい。「儲けること」が上手いかどうかがポイントだが、それは本来企業が磨くべきスキルだ。
グローバルなデジタル経済をもう一歩進めてくれそうなDEPA、もともとこの三ヵ国はTPPの「いいだしっぺ」のような国で、自由貿易の先駆国である。このような交渉が進んでいたことは寡聞にして知らず、その分大きな希望を持つことができた。こうなったら一刻も早く日本もこの交渉に加わってほしいですね。そしてRCEPでもこの議論を始めてほしいです。