「事実上の政権交代選択選挙」と位置付けられた参議院議員選挙が終わり、1ヵ月余がたった。野党が目指していた、与党の過半数割れは成った。さて、それで何かが変わったのかというと、実は何もない。石破政権の支持率が回復してきて、野党連合が固まる可能性はほぼゼロ。政権交代は無理で、秋の臨時国会でも案件ごとのパーシャル連合による補正予算や法案成立を期すしかない。
当然ながら時間を要し、回りくどいことになるだろう。主義主張の激突なら「熟議」としてやむを得ないのだが、時間がかかったり紛糾する原因が議員の不勉強であれば、目も当てられない。特に野党議員の不勉強ぶりは、業界では周知の事実である。
英国ではあらかじめ野党に政策研究の予算(本当の意味での政策活動費)が与えられていて「影の内閣」は名前だけのものではない(*1)。日本政界はそうなっていないので、旧民主党政権の最初に予算を組み換えようとして、
民主党閣僚「こういう予算を付けたい」
財務省官僚「ではどこを削りましょうか」
と行き詰ってしまった。結局「事業仕分け」というパフォーマンスでお茶を濁すことになる。ホテルの飾りつけでも、プロがやらないと入れ替えはうまくいかない。そこでアマチュアの野党議員にも勉強してもらおうと、霞ヶ関高級官僚が動き始めた。
霞が関官僚、野党に接近 自公の少数与党転落受け:東京新聞デジタル
政府批判色の強い<東京新聞>だから、官僚の野党接近を歓迎しているような書きぶり。しかしこれは俗に言う「ご説明攻撃」で、無知な議員を煙に巻いて取り込んでしまおうとする第一歩と見る。
安倍2.0政権では高級官僚人事を官邸に握られ、彼らは事実上支配されていた。昨今優秀人材が官僚になりたがらないと言われるが、給料が安い・仕事がきついだけでなく「国を動かすことができない」のが志望者減少の理由と思う。
与党と野党の調整役を買って出て、官邸からのお話を聞くだけだった「次官連絡会議*2」を復権させる意図もありそうです。官邸や国会が弱くなれば、霞ヶ関が強くなります。これも有権者の選択ということでしょうね。
*2:かつて権力を持っていたという「事務次官会議」を鳩山内閣が廃止、安倍2.0内閣で「次官連絡会議」として復活したが、かつてのように決定権を持つわけではない