目立たない法改正だが、今国会で銃刀法の改正が成立している。内容としては、
・「発射罪」を、拳銃だけでなく猟銃・空気銃にも拡大
・射程の長い散弾銃「ハーフライフル」規制を強化
である(*1)。一昨年安倍元総理が手製の銃で暗殺され、昨年警官2人が通常の散弾より強力な「スラグ弾」で殺されたことをうけての規制強化である。ただ100~200mもの有効射程を持つ銃「ハーフライフル」や弾丸「スラグ弾」の規制強化については、大型獣を倒すのが困難になるとの反対論もあった。現実にクマの出没情報が増え、被害も拡大している。日当が安くて、クマ対策のハンターが集まらないという報道もある。
具体的に、銃器による人間の被害と、クマの被害を見ていこう。
令和になってからの5年間で、銃器による死傷事件は5~12件/年(*2)。多くなってきたとはいえ、昨年は10件で負傷3名、死者7名であった。一方クマ被害はというと、2018年までの10年間では被害は50~150件、死者は2名/年にとどまっていたのだが、近年急増している。2023年4~10月の7ヵ月間で180件の被害、死者は5名を数えた。10月だけで3名が亡くなっている(*3)。
クマのような大型獣を倒すには、射程50mの散弾銃では危険すぎる。やはりハーフライフルとスラグ弾でないと・・・さすがにバレットライフル(.50口径)までは望まないけれど。規制強化でこれらを減らすのではなく、緩和して増やすべきタイミングなのではないか?
直近のデータで比較すれば、1年間の被害(死者)は、銃器によるものとクマによるものがほぼ同じ。負傷は50倍ほど多い。法整備には時間がかかるとはいえ、いかにもちぐはぐな銃規制強化でした。ちゃんとEBPMを履行してくださいね。
*1:銃の規制や罰則強化 改正銃刀法が成立 | NHK | 安倍晋三元首相 銃撃