20世紀型の陸戦では、機関銃から歩兵を守りながら敵の拠点(トーチカなど)を潰すための戦車が登場し「陸戦の王」と呼ばれた。遠隔地から正確な照準で大口径弾を降らせる砲兵は、死傷者の多くが砲撃によるものだとの統計もあって「戦場の神」とも呼ばれた。ただ、それらの武器は急速に主役の地位を奪われつつある。
代替わりする「王」と「神」 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
米国の海兵隊などはすでに戦車を全廃、自走砲もロケットランチャー(MLRS)に置き換えている。しかし世界最強とも言われるロシア陸軍は、新鋭戦車「T-90M」を量産・配備し始めたとの報道があった。
ロシア陸軍 新型戦車T-90M「プラルィヴ」を導入 ロステック | 乗りものニュース (trafficnews.jp)
第二次世界大戦の戦歴を見れば、スターリンの戦車リテラシーは傑出している。榴弾砲しか撃てない巡航戦車・徹甲弾しか撃てない歩兵戦車を配備した英国、50トンを超える巨大戦車を好んだヒトラー、間に合わせの航空エンジンを積んで車高を高くしてしまった米国と、戦車ドクトリンは各国間違いを犯してしまった。
スターリンは「陸上戦艦」T-35をお蔵入りにし、足回りを強化した中型戦車を量産した。重戦車にも50トンの壁は越えさせなかった。ろくな対戦車兵器を持たなかった帝国陸軍は、BT-7やT-26クラスの軽戦車にノモンハンで痛打を浴びた。歴戦のドイツ戦車隊も、ウンカのごとく押し寄せるT-34やSU-100は支えられなかった。その系譜を汲むロシア陸軍の最新鋭戦車とは、
・重量 46.5トン
・乗員 3名
・主砲 125mm滑空砲(ミサイル弾など43発搭載)
・機銃 12.5mm、7.62mm各1丁
・エンジン ディーゼル駆動1,000馬力
・路上速度 最大60km/h
のような仕様で、砲塔の電子化が進み、戦車長は砲塔がどの向きにあっても周囲の状況を確認できるように改良されている。リアクティブ・アーマーも標準装備されている。なによりディーゼル駆動は、火炎瓶攻撃などに強く接近戦での頼りになる。
ウクライナやベラルーシ経由でポーランド方面に侵攻するには、やはり戦車隊が重要ということだろうか。21世紀になっても、スターリンのドクトリンが生き続けているのかもしれませんね。